〒933-0005 富山県高岡市能町南3-26-2(能町小学校横/駐車場あり)
私は、昭和43年、北九州市に生まれました。父は、新日鉄の社員で、厳しくも几帳面な典型的な、九州男児でした。常に正確さを求める人でしたが、晩年は少し寂しげで、「遺言書を書いたぞ」と冗談のように、話すこともありました。大きな病気もなく突然亡くなった父の遺言書には、日付がなく、「財産はすべて妻に。母を大切に仲良くするように」といった作文のような内容が、残されていました。
母が、それを銀行に持って行きましたが、当然無効。結局、姉と私は父の思いを尊重し、すべての財産を母に譲る形で相続を終えました。
私たちは円満に終えることができましたが、家族の数だけ相続の形があるのも事実です。遺言がしっかりしていれば、家族に迷惑をかけず、本人にも安心をもたらすのです。
民法では、遺言者の意思を尊重し、遺言書による相続が優先されます。
遺言でとくに指定されていないときに、法定相続の規定になります。
例えば、全部、長年連れ添った妻に残したい。
家業を継ぐ子に会社を残したい。
農業を継いでくれる長男に土地・建物を相続させたい。
世話になった人(*法定相続人以外の人)にあげたい。
*法定相続人とは、民法によって定められた「相続できる権利がある人」のことです。
こういう遺言者の意志を主張されるには、遺言しないかぎり実現できません。
*遺留分の制約を除き、遺言すればその通りにできます。
*遺留分とは特定の相続人に法律上保証されている「最低限の取り分」のことです。
〈遺言が必要な場合〉
①遺言者が法律で書かれているのと違う配分をしたいとき
*推定相続人おのおのの生活状況を考慮して、法定相続分と違う配分で
相続財産を指定できる
*推定相続人とは「相続が起きたらこの人たちがもらうことになるだろうな」という予想される相続人のことです。
②遺産の種類や数が多い・複雑なとき
誰が何を取得するか、あらかじめ遺言で指定しておけば紛争防止に役立ち
⓷推定相続人が配偶者と兄弟姉妹のとき(子、親がいない場合)
兄弟姉妹には遺留分がありませんから、遺言書があれば残された配偶者が
全て相続できます。
④自営業を営んでいる場合
相続により資産が分散しては経営が成り立たなくなる恐れがある
(遺留分の配慮は必要)
⓹推定相続人以外の人へ遺産を残したい
・息子の嫁(息子が先に亡くなっている場合ゼロになる)
・内縁の夫、妻(入籍していない)
・第一順位でない孫(孫の親(遺言者の子)が生きている場合)
・看病してくれた人(相続人以外)や団体(宗教、政党)
・公共団体への寄付(市町村など)
⑥その他
遺言があると相続が円満に行われると思われる場合
・推定相続人の中に行方不明者や多重債務者がいる場合
・推定相続人同志の仲が悪い場合
・先妻との間に子があり、後妻がいる場合
・愛人との間に子がいる人
予備的遺言とは、最初に遺産を受け取る人が亡くなっていた場合などに備えて、「代わりにこの人に相続させる」と定めておく遺言です。
例:遺言書で息子に遺産を残す内容を定めたが、私(遺言者)より先に息子が亡くなってしまった場合、その息子の子、つまり私(遺言者)の孫に相続させるとあらかじめ定めておく。
*推定相続人が、遺言者より先に亡くなる可能性もあります。
*推定相続人とは「相続が起きたらこの人たちがもらうことになるだろうな」という予想される相続人のことです。
このような事態がおこり、その後に修正がなされていないと、せっかくの遺言書が生かされず、相続人間の協議となってしまいます。
よって、予備的遺言を作成することは、実に有益です。
遺言書は、残された親族が安心して、または円満に生活できるよう、ある程度の配慮も必要になります。
遺留分を無視した遺言書があると、相続人との争いに発展する可能性が高いです。
話がこじれると、家庭裁判所の調停や訴訟になり、時間もお金もかかる争いになりえます。
遺言執行者とは、遺言の内容を実際に実行する責任者のことです。
例:遺言書で指定された預貯金、不動産、有価証券、保険などが相続時にあるかどうか含めて調べ直し、財産目録の作成して、預貯金を解約したり、証券会社等の各種名義変更手続き等を行い、これらを遺言書で指定された相続人に分配する。
いざ、相続が開始されても、遺言執行者が指定されていないと、スムーズに事が運びません
遺言執行者を指定することには、相続をスムーズかつ確実に進めるための大きな利点があります。
遺言書には、自筆証書遺言、秘密証書遺言、公正証書遺言があります。
それぞれの利点・欠点を見てみましょう
①自筆証書遺言
遺言者が、全文、日付及び氏名を自分で書き、押印します。
利点:・費用がかからず、手軽に作成できる
・内容を誰にも知られずに書ける
欠点:・形式ミスで無効になる可能性
・紛失・改ざん・偽造のリスク
・発見されないこともある
・真偽をめぐって裁判になりやすい
・検認手続きが必要
*検認手続き:家庭裁判で遺言書の存在と内容を確認する。
遺言書の内容の中身の有効性の判断はしない
*自筆証書遺言の法務局保管制度が始まりました。(この場合、検認手続き不要)
②秘密証書遺言
遺言者が署名・押印した遺言書を封書にして公証役場に提出っします(自筆でなくともよくパソコンでも有効)
利点:・内容を秘密にできる
・公証人が関与するため、一定の証明力がある
欠点:・内容の中身に公証人のチェックが入らないため、公正証書遺言と
異なり内容の合法性や明確性が確認されないため無効になりやすい
・あまり利用されていない
⓷公正証書遺言
遺言者が2人以上の証人立会いのもと、あらかじめ遺言の内容を記載した書面やメモを提出し、これを公証人が筆記し、その内容を読み聞かせて、筆記の正確なことを承認したうえ、署名し押印します。
利点:・法的に最も安全・確実
・公証人が作成するため無効になる心配が少ない
・原本は公証役場に保管される
・家庭裁判所の検認手続きが不要で、すぐに執行できる
欠点:・作成費用がかかる
・証人2人が必要
・手続きや準備が煩雑
それぞれに、利点・欠点はありますが、安心かつ円満に相続手続きをすすめるために、公証証書遺言をお勧めいたします。
当事務所では、遺言者であるご本人と直接お会いして、残された親族への思いを十分にくみ取り、その思いを公証役場での公証人との打ち合わせで示し、遺言者の思いの詰まった遺言書作成のサポートをさせていただきます。
いかがでしょうか。
将来の相続トラブルを防ぐためには、遺言書の書き方が非常に重要です。
遺言書の内容や書き方次第で、将来的な相続争いを未然に防ぐことが可能です。
興味をお持ちの方は、ぜひお気軽にお問合せ・ご相談ください。