法務局の遺言書保管制度のメリットと申請ステップ
法務局で保管する4つのメリット
-
法務局が厳重に保管 遺言書が盗難、紛失、改ざんされるリスクがなくなります。また、自宅で保管していると、地震や火災などの災害で失われる心配もありません。
-
手数料は申請時のみ3,900円 保管にかかる費用は、申請時の手数料3,900円(遺言書1通につき)のみ。その後の保管期間に応じて費用が増えることはありません。
-
家庭裁判所の「検認」が不要 通常、自筆で書かれた遺言書は、相続が開始した際に家庭裁判所で「検認」という手続きが必要になります。しかし、この制度を利用して保管された遺言書は、検認が不要です。これにより、相続開始後の手続きがスムーズに進み、ご家族の負担を大きく軽減できます。
-
死亡時の通知制度で発見漏れ防止 遺言書が法務局に保管されていることを、ご家族が知らないまま相続が進んでしまう…という事態を防げます。相続開始後、特定の方(推定相続人など)が遺言書の有無を照会した際、遺言書が保管されていれば、その旨が通知される仕組みがあります。
ご注意いただきたい点
法務局の職員が遺言書の形式(日付や署名など)に不備がないかを確認してくれますが、これはあくまで形式面のみです。遺言書の内容が法的に有効であるか、あるいは遺言者ご本人の真意に基づくものかを法務局が保証するものではありません。
また、遺言書の内容に関する具体的な相談には応じてもらえませんので、内容の作成に不安がある場合は、事前に専門家への相談を検討しましょう。
遺言書保管申請の5つのステップ
では、実際に法務局で遺言書を保管してもらうためのステップを見ていきましょう。
ステップ 1:遺言書を作成する
- ご自身で遺言書を作成します。自筆証書遺言のルール(全文自筆、日付、氏名、押印)に沿って作成することが重要です。
ステップ 2:遺言書の保管申請書を作成する
- 法務局指定の保管申請書を作成します。
ステップ 3:添付書類等を準備する
- 以下の書類や費用を準備します。
- 顔写真付きの官公署から発行された身分証明書(マイナンバーカード、運転免許証など)
- 本籍と戸籍の筆頭者の記載がある住民票の写し
- 3,900円分の収入印紙(遺言書の保管申請の手数料として必要です)
ステップ 4:法務局に予約する
- 遺言書を保管したい法務局(遺言書保管所)へ、事前に予約を入れます。
ステップ 5:法務局(遺言書保管所)に行く
- 予約した日時に、必ずご本人(遺言者本人)が法務局へ出頭し、提出します。病気などで本人が出頭できない場合は、残念ながらこの制度は利用できません。
【推論】
法務局の遺言書保管制度は、遺言書の紛失や改ざんを防ぎ、検認が不要になるという大変便利な制度です。しかし、この制度は、遺言書を法務局が厳重に保管するものの、遺言作成時におけるご本人の意思能力の確認や、第三者からの影響がないかの確認を、公証人のような専門家が行うわけではありません。
そのため、将来、もしご家族の間で「本当に本人の意思で書かれた遺言書なのか」といった疑念が生じる可能性が、残念ながらゼロではないのが実情です。
より確実に、そしてご家族間の無用な争いを避けるという意味では、公証人が遺言書の内容を確認し、証人2人が立ち会う公正証書遺言が、非常に強力な手段となります。公正証書遺言は、公証人という法律の専門家が、遺言者ご本人の意思を直接確認し、遺言の内容が法的に有効であるかを確認しながら作成するため、後々のトラブル防止に絶大な効果を発揮します。
ご家族の安心と、遺言の確実な実現を最優先に考えるのであれば、公証役場で作成する公正証書遺言の検討を強くお勧めいたします。