近年、多様な生き方が認められる中で、「内縁関係」(事実婚)を選択されるご夫婦が増えています。
婚姻届を出さずに長年連れ添い、夫婦同然の生活を送られていても、日本の法律は「法律婚」を非常に重視しています。
この違いが、もしもの時に大きな問題を引き起こすのが、ズバリ「相続」です。
長年連れ添ったパートナーだからこそ、「私には当然、財産を相続する権利があるはずだ」とお考えではないでしょうか?しかし、残念ながら日本の現行法では、内縁の配偶者には法律上の相続権が認められていません。
内縁の配偶者が「法定相続人」になれない事実
日本の民法において、相続人になれるのは「法定相続人」と定められた親族のみです。
-
法律婚の配偶者:常に法定相続人となります。
-
内縁の配偶者:婚姻届を提出していないため、法律上の親族関係と認められず、法定相続人にはなれません。
このため、パートナーが亡くなった際、遺言書がない場合、内縁の配偶者は、たとえ長年連れ添っていても、パートナーの財産を相続することができないのです。財産は、故人のご両親、お子様、ご兄弟など、法律上の親族へと渡ることになります。
内縁関係でも財産を取得するための「2つの道」
では、内縁の配偶者は一切財産を受け取れないのでしょうか?いいえ、取るべき対策はあります。
1. 【最も確実な対策】遺言書を作成する
内縁の配偶者が財産を取得する上で、最も確実で重要な手段は、生前にパートナーが「遺言書」を作成しておくことです。
遺言書に「内縁の妻/夫である[相手の名前]に、〇〇の財産を遺贈する」と明確に記しておけば、法律上の相続権がなくても、その遺言に基づいて財産を受け取ることができます。
特に、法的な効力が強く、確実性が高い公正証書遺言の作成を強くお勧めします。
2. 【例外的な道】特別縁故者として申し立てる
亡くなった方に、子や親、兄弟姉妹といった法定相続人が一人もいない場合、家庭裁判所に申し立てを行うことで、内縁の配偶者が「特別縁故者」として認められ、財産の分与を受けられる可能性があります。
ただし、これはあくまで例外的な救済措置であり、裁判所の判断が必要なため、手間と時間がかかります。この方法に頼るのではなく、やはり生前の遺言書作成が最優先です。
相続権以外で内縁関係が守られる権利
相続権はないものの、内縁関係も婚姻に準ずる関係として、法律上一定の保護を受けています。
-
遺族年金: 生計を維持されていた事実があれば、国民年金や厚生年金の遺族年金が支給される場合があります。
-
財産分与・慰謝料: 内縁関係の解消時(離別時)には、財産分与請求権や、相手の不貞行為に対する慰謝料請求権が認められています。
長年の愛と信頼で結ばれた内縁関係だからこそ、もしもの時にお互いが生活に困らないよう、生前の準備が非常に重要になります。
内縁関係における相続のトラブルを回避し、大切なパートナーを守るために、ぜひ一度、遺言書作成について専門家にご相談ください。当事務所では、内縁関係特有の事情を考慮した遺言書の作成サポートを行っております。お気軽にお問い合わせください。