「公共事業の入札に参加して、事業を安定させたい」——そうお考えの建設業者さんにとって、避けて通れないのが「経審(経営事項審査)」です。

経審、つまり経営事項審査は、建設業者さんが公共工事の入札に参加するために、必ず受ける必要のある審査です。この審査は、あなたの会社の「体力」や「実力」を数値化し、ランク付けするためのもので、公共工事受注への大切なパスポートとなります。


P点(総合評定値)を上げ、公共工事の参加資格を得るための流れを分かりやすく解説します。

 

経審の流れ:5つのステップ

経審は、以下の5つのステップで進んでいきます。

  1. 事前準備

  2. 経営状況分析申請(Y点)

  3. 経営事項審査申請(X1, X2, Z, W点)

  4. 結果通知

  5. 入札参加資格審査申請


 

1. 事前準備

まず、経審に必要な会社の経営状態や工事実績などを整理しましょう。決算書確定申告書工事ごとの契約書などを正確に準備することが重要です。また、会社の技術職員の数や保有資格、社会保険の加入状況なども確認しておきましょう。


 

2. 経営状況分析申請(Y点)

このステップでは、会社の財務状況が数値化されます。国土交通大臣が登録した「登録経営状況分析機関」へ、決算書を提出して申請します。ここで算出されるのがY点(経営状況分析評点)です。申請から結果通知まで、通常1〜2週間ほどかかります。


 

3. 経営事項審査申請(X1, X2, Z, W点)

Y点の通知書が届いたら、次は審査申請です。会社の所在地を管轄する都道府県庁(大臣許可の場合は地方整備局)に申請します。ここでは、X1(完成工事高)、X2(自己資本額・平均利益額)、Z(技術力)、W(社会性等)といった項目が審査されます。申請から結果が出るまでは、通常1〜2ヶ月程度を見ておきましょう。


4. 結果通知

すべての審査が完了すると、「経営事項審査結果通知書」が届きます。この通知書には、各評価項目と、それらを総合したP点(総合評定値)が記載されています。P点の有効期間は、審査基準日(通常は直前の決算日)から1年7ヶ月なので、継続的な審査が必要です。

 

P点の計算式

 


それぞれの記号が何を表しているか、改めて確認しましょう。

  • P:総合評定値(P点)

    • あなたの会社の総合的な「体力」や「実力」を示す点数で、公共工事の入札に参加する際の重要な指標になります。小数点以下に端数が出た場合は四捨五入されます。

  • X1:完成工事高評点(経営規模)

    • 過去2年間(または3年間)の完成工事高を評価した点数です。会社の経営規模を示します。

  • X2:自己資本額・平均利益額評点(経営状況)

    • 会社の自己資本額と過去2年間の平均利益額を評価した点数です。会社の財務状況の健全性を示します。

  • Y:経営状況分析評点

    • 会社の財務諸表を基に、収益性、安全性、効率性、生産性などを分析して算出される点数です。

  • Z:技術力評点

    • 会社に在籍する技術職員の人数や資格、元請完成工事高の実績を評価した点数です。

  • W:その他の審査項目評点(社会性等)

    • 社会保険の加入状況、建設業の営業年数、防災協定への参加状況、法令遵守の状況などを評価した点数です。

ご認識の通り、P点の計算式においてX1(完成工事高)とZ(技術力)は最も高いウェイト(0.25)を持っています。そして、次に高いウェイト(0.20)を持つのはY(経営状況分析評点)ですね。

X1は会社の「売上」の総額が直接反映されるため、工事を多くこなすことが点数アップに直結します。

Z:技術力評点を具体的に見て、どうすれば高い評価になるかについて、詳しく解説します。Z点は、P点全体の25%を占める非常に重要な項目であり、さらにその内訳は「技術職員数(Z1)」が80%、「元請完成工事高(Z2)」が20%のウェイトを持っています。


 

Z:技術力評点を上げるための具体的なポイント

Z点を高く評価してもらうには、主に「技術職員の質と量」と「元請けとしての実績」の2つの側面からアプローチします。

 

1. 技術職員の質と量を高める(Z1:技術職員数)

Z点の中で最も大きな比重を占めるのが技術職員数です。以下の点に注力しましょう。

  • 1級技術者の確保と育成:

    • 1級施工管理技士(土木、建築、管工事など各業種)や1級建築士、技術士などの1級国家資格保有者を増やすことが最も効果的です。これらの資格を持つ技術者は、1人あたり5点(またはそれ以上の換算点)として評価されます。

    • ポイント: 採用活動で1級資格保有者を積極的に求める、あるいは既存の社員に資格取得を奨励し、資格手当などでサポートする体制を整えましょう。

  • 1級監理技術者講習の受講:

    • 1級施工管理技士などの1級国家資格を持つ技術者が「監理技術者講習」を修了すると、経審上は1人あたり6点として評価され、通常評価の5点よりもさらに高くなります。

    • ポイント: 1級資格を持つ技術者がいれば、積極的に講習の受講を促しましょう。講習は1日で修了でき、修了試験も比較的容易です。

  • 登録基幹技能者の活用:

    • 登録基幹技能者は、その職種における豊富な経験とマネジメント能力を持つ技能者で、経審では1人あたり3点として評価されます。

    • ポイント: 現場でリーダーを務める熟練の職人がいる場合は、登録基幹技能者講習の受講を検討してもらいましょう。

  • 2級技術者の育成:

    • 2級施工管理技士1級技能士などの2級相当の資格保有者も、1人あたり2点として評価されます。

    • ポイント: 若手社員にはまず2級資格の取得を目標とさせ、継続的な学習を支援しましょう。

  • その他技術者の活用:

    • 上記以外の、実務経験などで主任技術者要件を満たす技術者も1人あたり1点として評価されます。

    • ポイント: 現場経験が豊富なベテラン社員もZ点に貢献できます。

  • 常勤性の確保:

    • 経審で評価される技術職員は、審査基準日以前6ヶ月+1日以上、その会社に常勤している必要があります。非常勤や一時的な雇用では加点されません。

 

2. 元請完成工事高を増やす(Z2:元請完成工事高)

Z点のもう一つの要素は元請完成工事高です。

  • 元請け工事の受注を増やす:

    • 元請けとして完成させた工事の年間平均金額が評価されます。公共工事・民間工事を問わず、元請けとして自社で施工管理を担った実績を積み重ねることが重要です。

    • ポイント: 下請け工事が中心の会社でも、積極的に元請け案件を獲得する戦略を立てましょう。小規模な民間工事からでも実績を積み上げることが有効です。


Z点アップは一朝一夕にはいかないが、計画が重要

Z点の評価は、技術者の育成や元請け実績の積み重ねなど、中長期的な取り組みが不可欠です。しかし、P点全体に占めるウェイトが非常に高いため、Z点を着実に上げていくことが、公共工事の受注拡大や事業の成長に直結します。

 

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5. 入札参加資格審査申請

P点が算出されたら、いよいよ公共工事の入札に参加するための最終ステップです。入札したい国や地方公共団体に対して、経審の結果通知書を添付して入札参加資格を申請します。各発注機関の資格要件に基づいて審査が行われます。


経審は、手続きが複雑で時間もかかりますが、公共工事の参加資格を得るためには不可欠です。P点を高めることは、より大規模な工事の受注や、事業の安定と拡大に直結します。

やまもと行政書士事務所では、お客様の会社の現状を詳しくヒアリングし、Z点アップを含む経審全体の点数を上げるための具体的な戦略をご提案しています。技術者の資格取得計画から、元請け工事の実績作りまで、きめ細かくサポートいたしますので、ぜひ一度ご相談ください。

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