「公正証書遺言を作りたいけれど、費用がどれくらいかかるのか不安…」そう思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。公正証書遺言の作成には公証役場の手数料がかかります。
今回は、公正証書遺言の作成にかかる公証役場の手数料について、その計算方法や内訳を解説します。
遺言によって財産を受け取る人(相続人または受遺者)ごとに、その受け取る財産の価額(目的価額)に応じて手数料を算出し、それらを合算して全体の基本手数料とします。
具体例を見てみましょう。
【例】遺言者が総額7,000万円の財産を、以下のように遺贈・相続させる場合
-
妻に不動産と預貯金 計3,000万円を相続させる
-
長男に預貯金 2,000万円を相続させる
-
長女に株式 1,500万円を遺贈する
-
友人に現金 500万円を遺贈する
この場合、それぞれの目的価額に応じて手数料を計算し、合算します。
1. 妻(目的価額 3,000万円)
-
「1,000万円を超え3,000万円以下」の範囲に該当
-
手数料:23,000円
2. 長男(目的価額 2,000万円)
-
「1,000万円を超え3,000万円以下」の範囲に該当
-
手数料:23,000円
3. 長女(目的価額 1,500万円)
-
「1,000万円を超え3,000万円以下」の範囲に該当
-
手数料:23,000円
4. 友人(目的価額 500万円)
-
「200万円を超え500万円以下」の範囲に該当
-
手数料:11,000円
【基本手数料の合計】
上記をすべて合算します。 23,000円(妻)+ 23,000円(長男)+ 23,000円(長女)+ 11,000円(友人)= 80,000円
【遺言加算の適用】
この遺言全体の目的価額の合計額は、3,000万+2,000万+1,500万+500万=7,000万円です。
全体の財産が1億円以下の場合、「遺言加算」として11,000円が加算されます。
【このケースの公証役場手数料(基本手数料+遺言加算)】
80,000円(基本手数料合計)+ 11,000円(遺言加算)= 91,000円
この91,000円が、このケースにおける公正証書遺言の公証役場への基本的な手数料となります。これに加えて、遺言書の枚数に応じた正本・謄本作成手数料や、出張をお願いした場合は出張加算などが別途加わります。
その他の手数料
祭祀主宰者の指定:11,000円。
目的価額が1億円以下の場合:11,000円加算。
遺言の撤回:原則11,000円。
病床執務の場合:通常手数料の1.5倍加算。
「個別の状況に応じた正確な情報につきましては、公証役場または公証人に直接お問い合わせいただけますようお願い申し上げます。
公正証書遺言は「安心料」です。
公証役場の手数料の他に、証人への謝礼や行政書士などの専門家への報酬も必要になります。これらの費用は一見すると負担に感じるかもしれませんが、公正証書遺言は無効になるリスクが極めて低く、家庭裁判所の検認も不要です。
ご不明な点やご不安なことがあれば、ぜひ専門家にご相談ください。