経審における「積み上げ方式」とは、主にX1(完成工事高)の評点を算出する際に用いられる、複数の建設業許可を持っている場合に、特定の業種の完成工事高を他の関連する業種の完成工事高に合算して計上するための仕組みです。

なぜ「積み上げ方式」が必要なのか?

建設業許可には29種類の業種があり、一つの建設工事が複数の業種に該当するケースや、会社が複数の許可業種を持っているケースが頻繁にあります。

例えば、道路建設の一環として舗装工事を行う場合、これは「土木一式工事」として請け負うこともできますし、「舗装工事」として専門的に請け負うこともできます。

もし、貴社が「土木一式工事」と「舗装工事」の両方の許可を持っていて、両方で経審を受けたい、またはどちらか一方で高い評点を取りたいと考えた場合、単純に各業種の完成工事高を合計すると、同じ工事が二重に計上されてしまう可能性があります。

このような二重計上を防ぎつつ、会社全体の完成工事高を最大限に評価してもらうために「積み上げ方式」が導入されています。

 

積み上げ方式の基本的な考え方とルール

  1. 二重計上の排除: 最も重要なのは、一つの工事の完成工事高を二つ以上の業種に重複して計上することはできないという原則です。例えば、建築一式工事として請け負ったビル建設の中で行った電気工事の売上を、建築一式工事としても電気工事としても計上することはできません。

  2. 一式工事への積み上げ優先: 土木一式工事建築一式工事といった「一式工事」の許可を持っている場合、その一式工事の中に含まれる専門工事(例:土木一式工事に含まれる舗装工事、とび・土工工事など)の完成工事高を、一式工事の完成工事高に含めて計上(積み上げ)することができます。

    • この場合、積み上げられた専門工事の完成工事高は、その専門工事としては経審を申請できなくなります(一式工事に吸収されるため)。

  3. 関連業種間での積み上げ: 一式工事以外でも、特定の関連性のある専門業種間で完成工事高を積み上げることが認められている場合があります。これは各行政庁(都道府県)によってルールが異なるため、確認が必要です

  4. 「積み上げ元」と「積み上げ先」の許可が必須: 積み上げを行う場合、積み上げ元の業種と積み上げ先の業種の両方で建設業許可を取得している必要があります。

  5. 全額積み上げの原則: 基本的に、積み上げを行う際は、積み上げ元の業種の完成工事高の全てを積み上げ先へ移す必要があります。一部だけを移すことはできません。

  6. 継続性の原則: 一度積み上げ方式を採用して申請した場合、その翌年度以降も原則として同じ積み上げ方法を継続して適用する必要があります。

積み上げ方式の具体例

貴社が以下の許可業種と完成工事高を持っているとします。

  • 土木一式工事:年間平均 8,000万円

  • 舗装工事:年間平均 3,000万円(うち2,000万円は土木一式工事として請け負った中に含まれる舗装工事、1,000万円は舗装単体で請け負った工事)

 

積み上げをしない場合:

  • 土木一式工事で申請:8,000万円

  • 舗装工事で申請:1,000万円(重複部分を排除した純粋な舗装工事単独分)

    • この場合、それぞれの業種で点数が評価されます。

 

積み上げをする場合(土木一式工事に舗装工事を積み上げる)

  • 土木一式工事の完成工事高に、舗装工事の完成工事高(3,000万円)を全て積み上げます。

  • 土木一式工事のX1評価対象額: 8,000万円 + 3,000万円 = 1億1,000万円

  • この場合、舗装工事単独では経審を申請できなくなります。

このように、積み上げ方式を上手に活用することで、得意な業種や公共工事で取得したい工種においてX1点の評点を高くし、結果的にP点アップに繋げることが可能です。

一式工事の完成工事高に含めることができる専門工事

一式工事名 含めることができる専門工事 備考(画像から読み取れる範囲)
土木一式工事 とび・土工・コンクリート工事  
  石工事  
  ほ装工事  
  しゅんせつ工事  
  水道施設工事  
  鋼構造物工事 (土木に関する工事に限る)
  解体工事  
建築一式工事 大工工事  
  左官工事  
  とび・土工・コンクリート工事 (建築に関する工事に限る)
  屋根工事  
  タイル・れんが・ブロック工事  
  板金工事  
  ガラス工事  
  塗装工事 (建築に関する工事に限る)
  防水工事  
  内装仕上工事  
  熱絶縁工事  
  建具工事  
  電気工事 (建築に関する工事に限る)
  管工事 (建築に関する工事に限る)
  鋼構造物工事 (建築に関する工事に限る)
  鉄筋工事 (建築に関する工事に限る)
  塗装工事 (建築に関する工事に限る)
  解体工事  

専門工事の完成工事高に含めることができる専門工事

専門工事名 含めることができる専門工事
とび・土工・コンクリート工事 石工事
  タイル・れんが・ブロック工事
  解体工事
石工事 とび・土工・コンクリート工事
屋根工事 板金工事
電気工事 電気通信工事
  消防施設工事
管工事 熱絶縁工事
  水道施設工事
  消防施設工事
建具工事 ガラス工事
  板金工事
熱絶縁工事 管工事
タイル・れんが・ブロック工事 とび・土工・コンクリート工事
鋼構造物工事 鉄筋工事
板金工事 屋根工事
ガラス工事 建具工事
内装仕上工事 建具工事
熱絶縁工事 管工事
電気通信工事 電気工事
水道施設工事 管工事
消防施設工事 管工事
  電気工事
 

 

経審の「積み上げ方式」は、主にX1(完成工事高)の評価に直接影響を与えるものですが、Z点(技術力)にも間接的、あるいは直接的に影響を与える可能性があります。

Z点は、以下の2つの要素から構成されています。

  1. Z1:技術職員数 (Z点全体の80%のウェイト)

  2. Z2:元請完成工事高 (Z点全体の20%のウェイト)

 

積み上げ方式がZ点に影響する理由

 

Z点に影響が出る主な理由は、X1とZ2の完成工事高の計算期間が連動していること、そして特定の工種に完成工事高を集中させることで、Z2の点数に変化が生じる可能性があるからです。

 

1. Z2(元請完成工事高)への影響

 

  • X1の計算期間との連動: X1(完成工事高)を2年平均で計算するか、3年平均で計算するかは、会社が選択できます。そして、Z2(元請完成工事高)の計算期間は、X1で選択した期間(2年平均または3年平均)と自動的に連動します。 もし、積み上げ方式によって特定の工種のX1の計算期間が変わったり、その中に含まれる元請工事高の実績の評価が変わったりすれば、Z2の計算にも影響を及ぼす可能性があります。

  • 完成工事高の集中: 例えば、本来「舗装工事」として計上していた元請工事高を、「土木一式工事」に積み上げたとします。この場合、舗装工事単体で経審を申請しない選択をすれば、舗装工事のZ2(元請完成工事高)は評価されなくなります。しかし、その分が土木一式工事の元請完成工事高に加算されれば、土木一式工事のZ2点が高くなる可能性があります。 このように、どこの業種に元請工事高を集中させるかによって、各業種におけるZ2の評点が変動します。 結果として、特定の業種で高いZ点を得たい場合に、積み上げ方式が利用されることがあります。

 

2. Z1(技術職員数)への間接的な影響(戦略的な選択)

 

Z1(技術職員数)は、原則として各技術職員が保有する資格と、その技術職員をどの業種で登録するかによって決まります。積み上げ方式自体が直接的に技術職員数を増減させるわけではありません。

しかし、積み上げ方式によって「どの業種で経審を受けるか」という会社の戦略が変わると、技術職員の登録の仕方も変わることがあります。

  • 例えば、これまで「舗装工事」と「土木一式工事」の両方で経審を受けていた会社が、積み上げ方式により「土木一式工事」に一本化するとします。

  • この場合、技術職員を「土木一式工事」に集中して登録することで、その工種でのZ1点を最大化しようとする戦略が考えられます。

  • また、一人の技術者は最大2つの業種までしか技術職員として登録できないというルールがあるため、どの業種に強みを持たせたいかによって、技術者の登録業種を調整することになります。

 

まとめ

 

積み上げ方式は主にX1(完成工事高)に影響しますが、その結果として、Z点の中の「元請完成工事高(Z2)」も連動して変動します。 さらに、経審の申請方針が変わることで、「技術職員数(Z1)」の登録戦略にも影響を与え、間接的にZ点に影響を及ぼすことがあります。

ただし、積み上げのルールは複雑であり、各行政庁によって細部が異なるため、申請前に管轄の行政庁のガイドラインを確認するか、建設業専門の行政書士に相談することをおすすめします。

 

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