尊厳死宣言は、遺言書作成と同時に行うことで、ご自身の「もしも」と「その先」の安心を一度に形にできます。
尊厳死宣言とは? もしもの時の「あなたの意思」を明確に
「尊厳死宣言」とは、あなたが将来、回復の見込みがない末期状態に陥った際、いたずらに生命を長らえさせるための延命治療を拒否し、人間としての尊厳を保ちながら穏やかに死を迎えたいという意思を、事前に表明しておくことです。
この意思表示は、もしもの時にあなたが望まない医療行為で苦しむことを避け、ご家族が延命治療に関する重い決断を迫られる負担を軽減します。また、医療現場にとっても、患者さんの明確な意思があることで、安心して医療を提供しやすくなります。
尊厳死宣言は「公正証書」にするのが安心な理由
尊厳死宣言は私的な文書でも可能ですが、最も確実で法的に強い証拠能力を持つのは「尊厳死宣言公正証書」として作成することです。
【公正証書にするメリット】
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本人の意思を明確に証明: 公証人が直接本人から意思を確認し作成するため、「本人の意思ではなかった」といった争いを防ぎます。
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紛失・偽造のリスクが低い: 原本が公証役場に保管されるため、紛失の心配がなく、偽造のリスクも極めて低いです。
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医療現場での高い信頼性: 公正証書であれば、医療機関も安心してあなたの意思に従いやすくなります。
尊厳死宣言公正証書には、延命治療の拒否だけでなく、苦痛緩和措置の希望、家族や医療関係者への免責、そして宣言の撤回可能性などを記載します。
救急現場での対応と、尊厳死宣言の意思を伝える対策
尊厳死宣言をしていても、救急車で運ばれた場合、救急隊員は原則として救急蘇生措置を開始します。これは、現場で患者さんの病状や宣言の有効性を瞬時に判断することが困難なためです。
しかし、あなたの尊厳死の意思を尊重してもらうための対策はあります。
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公正証書の携帯と周知: 尊厳死宣言公正証書のコピーを常に携帯し、家族やかかりつけ医にもその存在と保管場所を共有しましょう。
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ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の活用: 将来の医療やケアについて、ご家族や医療専門家と話し合い、あなたの意思を深め、共有する「人生会議」を行うことも大切です。
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かかりつけ医との連携: 普段から診てもらっている医師に延命治療を望まない意思を明確に伝え、カルテに記載してもらいましょう。これにより、病院に搬送された際に情報がスムーズに共有されやすくなります。
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DNAR/DNRオーダー(医療機関内で医師と合意): 終末期医療の段階にある場合、医師と相談し、具体的な蘇生措置を行わないよう依頼する指示を出すことも可能です。
尊厳死宣言は、ご自身の「人生の最期」をどのように迎えたいかという、非常に個人的で大切な意思表示です。また、遺言書はあなたの財産に関する最終的な意思を明確にし、残されたご家族の「争続」を防ぐための重要な手段です。
このように、尊厳死宣言と遺言書は、それぞれ異なる目的を持ちながらも、あなたの生前から死後にかけて、切れ目なく「想い」と「安心」を繋いでいくための大切な準備となります。
特に、相続人がいらっしゃらない方は、ご自身の判断能力が低下した際の支援(任意後見契約)から、ご逝去後の事務手続き(死後事務委任契約)、そして財産の行方(遺言)まで、包括的に備えておくことで、最大限の安心を得られます。
どこから手をつければ良いか分からない、自分の場合はどうすれば良いのか、そんな時はどうか一人で悩まず、お気軽にご相談ください。あなたの「もしも」と「その先」の安心を、一緒に形にするお手伝いをさせていただきます。