人生会議は、自分らしい最期をデザインする未来の対話
. 1.はじめに:訪問歯科で見た「ご家族の葛藤」と「病状の現実」
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共感と導入: 訪問歯科の現場で、パーキンソン病や筋萎縮性側索硬化症(ALS)など、進行性の難病と闘う患者さんと、そのご家族の姿を数多く見てきました。病状が少しずつ進行していく中で、何とか患者さんに寄り添い、最善を尽くそうと奮闘されるご家族の姿は、計り知れない努力と葛藤の連続だったことでしょう。
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問題提起: その中で、多くの患者さんに共通して見られたのが「嚥下(えんげ)障害」です。食べ物や飲み物をうまく飲み込めなくなり、それが原因で「誤嚥(ごえん)」を起こし、肺炎を併発して入退院を繰り返すケースが少なくありません。実を言うと、この「誤嚥性肺炎」は、日本人の死因の6位に挙げられる病気の一つなのです。 厚生労働省の「人口動態統計」主な死因の構成割合(令和6年)
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解決策の提示: 進行性の病気は、個人差はあれど、徐々に身体機能が低下していきます。だからこそ、まだ意思表示が明確にできる「その時」が来る前に、「人生会議(アドバンス・ケア・プランニング:ACP)」を開き、ご自身のあり方やご家族との関わり方について、じっくり話し合うことが何よりも大切なのです。
2. 「嚥下障害・誤嚥性肺炎」の影:進行性疾患と向き合う現実
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病気の進行: パーキンソン病やALSのような神経難病は、徐々に神経細胞が破壊され、身体の機能が低下していく特徴があります。初めは小さな変化でも、時間の経過とともに日常生活に大きな影響を及ぼします。
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嚥下障害のリスク: 特に、食べ物を飲み込むための筋肉や神経がうまく機能しなくなり、「嚥下障害」が起こりやすくなります。これにより、飲食物が誤って気管に入ってしまう「誤嚥」が頻繁に発生し、口腔内の細菌が肺に入り込むことで「誤嚥性肺炎」を繰り返すことになります。
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ご家族への影響: 患者さんの状態が進行するにつれて、介護の負担は増大し、ご家族は身体的、精神的、そして経済的な面でも大きな重圧を抱えることになります。「どこまで治療を続けるべきか」「どんなケアが最善か」といった重い選択を迫られることも少なくありません。
3. なぜ今、「人生会議(ACP)」が必須なのか?
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「今」だからこそできること: 進行性の病気の場合、時間が経つほどご自身の意思を明確に伝えられなくなるリスクが高まります。まだ意思表示がはっきりできる「今」だからこそ、ご自身の希望や価値観を家族や医療・介護関係者と共有し、具体的な計画を立てることが重要です。
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「人生会議」とは: 終末期医療やケアに関するご自身の希望を、家族や医療・介護の専門家と繰り返し話し合い、共有するプロセスです。これは一度で終わるものではなく、病状や状況の変化に応じて見直していくものです。
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話し合うべき具体的な内容:
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「私のあり方」: どのような医療やケアを受けたいか(延命治療の希望、望まない医療行為、痛みのコントロールなど)、どこで最期を過ごしたいか(自宅、病院、施設)、人生で何を一番大切にしているか。
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「家族のかかわり方」: ご家族にどこまで判断を委ねたいか、ご家族にどのような負担をかけたくないか、どんな最期を共に迎えたいか。
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必要に応じて、尊厳死宣言公正証書や任意後見契約など、具体的な法的準備に繋げることも検討できます。
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4. 富山で人生会議を進めるために:専門家と共に
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ご家族だけでこの重いテーマを抱え込む必要はありません。富山県には、医療・介護の専門家や、私たち行政書士のような法律の専門家がいます。
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人生会議は、単に延命治療の是非を決めるだけでなく、ご自身の価値観や生き方を再確認し、大切な家族との絆を深める機会でもあります。
訪問歯科での経験から、私は患者さんとご家族の「もっと早く話し合っておけば…」という声にならない想いを何度も感じてきました。人生会議は、決して「死」を語ることだけではありません。それは、「自分らしい生き方」の最後までをデザインし、大切な家族との絆を深める「未来のための話し合い」です。
富山県で「人生会議」を始めたいけれど、どう切り出せばいいか分からない、話し合いの進め方に不安がある、あるいは具体的な法的準備について知りたい。そんな時は、いつでもお気軽にご相談ください。あなたの「想い」と「安心」を形にするお手伝いをさせていただきます。