人手不足と最低賃金改定の「ダブルパンチ」に悩む経営者へ
厚生労働省の中央最低賃金審議会は、2025年度の最低賃金の目安について、全国平均で時給1,118円とする方針をまとめました。これは過去最高の上昇幅となり、富山県においても、現行の998円から時給1,061円へと、初めて1,000円の大台を超える見込みです。
この大幅な引き上げは、人手不足の解消や労働者の生活安定に繋がる一方で、多くの企業、特に建設業界にとっては、人件費増という大きな課題をもたらします。結婚して若くしてマイホームを建てるのが定番の富山県では、私の事務所近くの能町小学校付近でも住宅の建設ラッシュが続いています。仕事はあるものの、深刻な人手不足、資材の高騰、そして最低賃金の上昇という、三重苦に悩む社長様は少なくありません。
一昔前は求職者で溢れていたハローワークも、今では求人者が必死に働き手を求めている状況です。賃金を上げても人が集まらない時代、私たちはこの変化の波をどのように乗り越えていけば良いのでしょうか。
賃金だけでは解決しない、人手不足の根本原因
「最低賃金を上げれば人が来てくれる」という、そんな単純な時代はもう終わってしまいました。給与を上げてもなかなか人が集まらない、採用コストばかりが増えていく…そんなふうにお悩みの社長様もいらっしゃるのではないでしょうか。
求職者の方々が本当に求めているのは、実は給与額だけではないのかもしれません。 昔は「仕事は見て盗むもの」と言われたものですが、今は、一つひとつ丁寧に教えてもらえる安心感や、将来のキャリアが見通せる会社を求める若い世代の方が増えているように感じます。土日がお休みだったり、有給休暇が取りやすかったり、残業を減らす取り組みなど、仕事とプライベートのバランスも、会社を選ぶ上でとても大切な要素になっていますよね。
「この会社で働くと、将来どうなれるのだろう?」という見通しが持てるかどうかが、特に若い世代の方にとっては重要なんです。資格取得を応援してくれる制度があったり、頑張りや技術力をきちんと評価してくれる仕組みがあるかどうかが、働く上でのやりがいやモチベーションに大きく影響する時代なのですね。
最低賃金改定をチャンスに変える「生き残り戦略」
賃金の上昇は、私たち経営者にとって、確かに大きな負担です。ただ、これを単なるコスト増と捉えるのではなく、「質の高い人材に長く続けてもらうための、大切な先行投資」だと考えてみるのはいかがでしょうか。
【戦略1】付加価値のある待遇で差別化を図る
賃金アップが難しいとしても、給与以外の部分で会社の魅力を高めていくことはできます。
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資格取得支援: 仕事に必要な資格の費用を会社が全額負担し、資格手当もつけることで、社員さんのスキルアップを温かく応援しましょう。
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福利厚生の充実: 家族手当や住宅手当、健康診断を少しグレードアップするなど、社員さんやそのご家族の生活を支える福利厚生を強化してみませんか。
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明確な評価制度: 頑張りや技術力がきちんと評価されて、お給料や役職に繋がるような、分かりやすい評価の仕組みを取り入れることで、社員さんの「やる気」を大切にしましょう。
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【戦略2】IT導入で「生産性向上」を図る
人手が足りないからこそ、少ない人数でもお仕事を効率よく進めていくことが大切です。
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業務のDX化: スマートフォンやタブレットで図面を共有したり、勤怠管理のシステムを導入したりすることで、現場と事務所の連携をスムーズにしませんか。
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時間外労働の削減: 業務を効率化すれば残業も減らすことができ、働きやすい環境になります。これは、社員さんの定着率を上げるためにもとても大切なことですよね。
未来を見据えた積極的な経営戦略で、人手不足を乗り越える
物価が上がっていくのは、本当に厳しい現実です。スーパーで買う食品が、体感として1.5倍ほどになっていると感じる方も多いのではないでしょうか。ですが、このような大変な時代だからこそ、私たちの会社の真価が問われるのかもしれません。
ただ賃金を上げるだけでなく、そこで働く皆さんの声に耳を傾け、一人ひとりが働きがいを感じられる職場環境を築いていくことが、結果として会社の生産性を高め、人手不足という大きな課題を乗り越えていく力になります。
未来を見据えた積極的な経営戦略こそが、この変化の時代を力強く生き抜く鍵となるのではないでしょうか。