遺言における特定団体への寄付と相続人
遺言書に寄付の記載があったら?遺言執行者の役割と注意点
遺言書に特定の団体への寄付(遺贈)が記載されている場合、その遺言書に「遺言執行者」が指定されていれば、その役割は非常に重要です。遺言執行者は、亡くなった方の最後の意思である遺言書の内容を確実に実現するための手続きを行う人物です。
遺言執行者の義務と相続人の同意
遺言執行者には、遺言書に記載された通りの寄付手続きを行う義務があります。たとえ相続人全員がその内容に反対したとしても、遺言執行者は独自の判断で寄付の項目を無効にすることはできません。遺言者の意思は法的に尊重されるため、遺言執行者はその意思を忠実に執行する職務を負います。遺言執行者がいる場合、遺言の内容と異なる遺産分割協議を行うには、相続人全員の同意に加え、遺言執行者の同意も必要となります(民法第1012条)。遺言執行者が相続人の意向に沿って寄付を中止したり、内容を変更したりすることは、その職務を正当に果たしたことにはなりません。
遺留分を侵害している場合の対処法
もし寄付の内容が法定相続人の遺留分(いりゅうぶん)を侵害している場合、法定相続人は、寄付を受けた団体に対して、侵害された遺留分に相当する金銭の支払いを請求できます。この「遺留分侵害額請求」は、相続人固有の権利です。
また、遺言書で相続人以外の人に遺贈がされている場合は、その遺贈を受ける人(受遺者)の同意がなければ、遺言書と異なる遺産分割を行うことはできません。
遺言書は、故人の最後の意思を尊重するための大切な書類です。しかし、遺言執行者の役割や、遺留分などの専門的な知識がないと判断が難しい場面も少なくありません。
トラブルを未然に防ぎ、故人の意思を正しく尊重するためにも、遺言書の作成時や、遺言内容に疑問が生じた際には、安易な自己判断をせず、専門家に相談することをお勧めします。専門家の力を借りることで、故人の想いを尊重しつつ、相続人全員が納得できる解決策を見つけることができるでしょう。