知っておきたい!意外な相続財産と見落としがちな手続き
相続というと、多くの方が現金や預貯金、不動産を思い浮かべるでしょう。しかし、財産はそれだけではありません。故人が残した意外なものも、相続の対象となることがあります。遺産分割や相続税申告で困らないよう、知っておくべきポイントを解説します。
1. 意外な相続財産の例
ゴルフ会員権・リゾート会員権
多くのゴルフ会員権やリゾート会員権は相続の対象です。ただし、会則によっては会員資格が失われる場合もあるため、事前に運営会社に確認が必要です。また、相続税の課税対象となり、取引相場や預託金の有無によって評価額が異なります。
著作権・特許権
故人が作家や発明家であった場合、著作権や特許権といった知的財産権も相続財産です。これらの権利は、今後も使用料やライセンス料を生み出す可能性があるため、その価値を正確に評価することが重要です。
仮想通貨
近年、問題となることが多いのが仮想通貨(暗号資産)です。故人が保有していた仮想通貨も相続財産となります。しかし、その存在やウォレットのパスワードが分からないと、相続人がアクセスできず、事実上「宙に浮いた財産」となってしまう可能性があります。
また、仮想通貨は価値の変動が激しいため、相続開始時(被相続人が亡くなった日)の価格で評価された後に、暴落してしまうリスクがあります。これにより、売却して得られる金額以上の相続税を支払う事態も起こり得るため、その扱いは慎重に行う必要があります。
漁協・農協の出資持分
漁業協同組合(漁協)や農業協同組合(農協・JA)に出資していた場合、その出資持分も相続財産です。ただし、株式会社の株とは異なり、組合員の地位は相続されません。相続人は出資持分の払い戻しをそれぞれの協同組合に請求する権利を相続することになります。
2. 相続財産ではないが手続きが必要なもの
iDeCo・企業型DC
iDeCo(個人型確定拠出年金)や企業型DC(企業型確定拠出年金)は、相続財産ではありません。これらは「みなし相続財産」として扱われ、相続税の課税対象となります。
死亡一時金を受け取るには、遺族が運営管理機関に請求手続きを行う必要があります。請求期限は故人の死亡から5年以内と定められており、期限を過ぎると受け取れなくなります。また、税制上の注意点として、死亡から3年以内に受け取った場合は、相続税の非課税枠(500万円×法定相続人の数)が適用されますが、3年を超えてから受け取ると、この非課税枠が適用されず、一時所得として所得税や住民税の課税対象となる可能性があります。
企業型DB・国民年金基金等
企業型DB(確定給付企業年金)や国民年金基金に加入していた場合も、遺族が受け取れる一時金があります。これらの制度からの死亡一時金は、みなし相続財産として扱われます。特に、通算企業年金制度では、年金を受け取る前の死亡でも一時金が受け取れる場合がありますので、確認が必要です。
故人が受給していなかった年金
故人が年金を受給できる年齢に達していたにもかかわらず、繰り下げ受給などの理由でまだ請求していなかった場合、その未支給の年金は相続財産ではありません。これは遺族が請求できる「未支給年金」として扱われます。遺族が年金事務所に請求することで、故人が生きていれば受け取れたはずの年金(死亡した月までの分)を受け取ることができます。
年金の受給権には時効があり、故人が亡くなった日の翌月から5年以内に手続きをしないと、権利が消滅してしまいます。また、受け取れる年金分は、死亡日までの期間分に加えて、過去5年間にさかのぼって請求することが可能です。
サブスクリプションサービス
故人が契約していたサブスクリプションサービスは、自動的に解約されません。料金の請求が続くため、遺族は故人のクレジットカード明細やメール履歴を調べて、一つひとつ解約手続きを行う必要があります。これは金銭的な価値のある「財産」というよりは、「デジタル遺品」として整理すべきものと言えるでしょう。
3. スムーズな相続のために
このように、相続財産は多岐にわたります。遺族が故人の残した財産をすべて把握し、適切な手続きを行うことは容易ではありません。特に、故人しか知らない情報(デジタルアカウントのパスワードなど)が多い現代では、より複雑になっています。
このようなトラブルを避けるために、生前にエンディングノートを作成し、財産の一覧や各種アカウント情報をまとめておくことをお勧めします。また、相続に関するご相談は、専門家である行政書士に依頼することで、手続きの負担を軽減し、円滑な相続を進めることができます。
相続財産の調査や名義変更の手続きでお困りの際は、お気軽にご相談ください。