左官工事、防水工事、とび・土工工事の技術者要件
建設業の新規許可申請において、左官工事、防水工事、とび・土工工事の3業種をまとめて取得することは、一見効率的に見えますが、営業所技術者資格の要件がそれぞれ異なるため、注意が必要です。
特に、実務経験の期間を短縮できる「施工管理技士」の資格が、どの業種に適用されるかが重要なポイントです。
1. 1級土木施工管理技士
これらの資格を持つ場合、とび・土工工事は営業所技術者要件を満たすために、原則として実務経験は不要です。
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左官工事:
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1級土木施工管理技士の資格に加えて、左官工事に関する実務経験が資格取得
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合格後3年以上必要となります。
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とび・土工工事:
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1級土木施工管理技士の資格で営業所技術者として認められます。
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防水工事:
・1級土木施工管理技士の資格に加えて、防水工事に関する実務経験が資格取得
合格後3年以上必要となります。
2. 1級建築施工管理技士
これらの資格を持つ場合、左官工事ととび・土工工事・防水工事の営業所技術者要件を満たすためには実務経験は不要です。
このように、国家資格等で実務経験が必要性が異なります。
これらの違いは、各業種の専門性と、施工管理技士が想定している工事の範囲によるものです。新規に複数の業種を申請する際は、所有している技術者資格がどの業種の要件を完全に満たしているかを事前に確認することが不可欠です。
. 左官工事とは?その伝統と現代の役割
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左官工事の概要:
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壁や床、天井にモルタルや漆喰、プラスターなどを塗り、仕上げる工事です。
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建物の内外装を美しく整えるだけでなく、耐久性や防火性、防水性などを高める重要な役割を担います。
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左官工事の例示:
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モルタル工事
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漆喰(しっくい)工事
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プラスター工事
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石膏ボードのパテ処理(壁紙を貼る前の下地処理)
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防水モルタルを用いた防水工事
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2. 左官工事と「防水工事」の相違点
左官工事と防水工事は、どちらも水漏れを防ぐ目的を持つため混同されやすいですが、許可の考え方は明確に区別されています。
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防水工事:
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アスファルト、モルタル、シーリング材などの材料を用いて、建物の屋上、外壁、バルコニーなどに専門的な防水層を形成する工事です。
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代表例:アスファルト防水、シート防水、ウレタン防水。
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左官工事:
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モルタルなど、左官材料を塗ることで防水性を高める工事です。
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代表例:防水モルタルを塗る工事。
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相違点: 使用する材料と施工方法が異なります。モルタル系の防水は左官工事、アスファルトやシートなど、防水を主たる目的とした材料を用いる場合は防水工事に分類されます。
3. 左官工事と「とび・土工工事」の相違点
特にモルタル工事やコンクリート工事は、とび・土工工事と混同されやすい部分です。
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とび・土工工事:
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足場の設置、土砂の掘削、コンクリートの打設、杭打ちなど、建物の基礎や土台を築く工事です。
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代表例:地盤改良、基礎工事、コンクリート打設(流し込む作業)。
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左官工事:
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壁土やモルタル等を「コテ塗り」「吹き付け」で仕上げる工事です。コンクリートを流し込んだ後の表面を平滑にしたり、塗り厚を調整したりする作業が該当します。
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相違点:
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とび・土工工事は「基礎や土台を作るための工事」
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左官工事は「コテやハケを使って、塗り仕上げる工事」
この点を明確にすることで、読者はそれぞれの業種の役割を正確に理解することができます。
4. まとめ:許可申請の注意点
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左官工事の許可があれば、モルタルを用いた防水工事は行えますが、アスファルト防水やシート防水は行えません。
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同様に、とび・土工工事の許可があっても、コンクリートのコテ仕上げは左官工事に該当する場合があり、注意が必要です。
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これらの業種は重複する部分が多いため、それぞれの業務範囲を正確に把握しておくことが、建設業許可を適切に取得・維持するために不可欠です。
「左官工事、防水工事、とび・土工工事。一見似ているようで、許可の要件は全く異なります。どの許可を取得すべきか迷っている方は、ぜひ一度ご相談ください。