真夏の屋根でビニール足袋が溶ける!?知られざる板金職人の熱い仕事と家族の絆
私の知人に板金工事業を営む方がいます。
朝早くから家を出て現場へ向かう彼を見送る奥様は、毎日早朝にお弁当を作っておられます。現場が日々変わるため、短い昼休憩は車の中でお弁当を食べるそうです。特に夏場は過酷で、灼熱の屋根の上を歩くためのビニール足袋が溶けてしまうほどだとか。天候に左右され、体力的にも精神的にもハードな仕事を、ご家族総出で支えておられる姿には、本当に頭が下がる思いでした。
そんな過酷な環境で働く板金職人。彼らが担う「建築板金」とは、いったいどのような仕事なのでしょうか。
1. 仕事の基本と専門性について
「板金」って何をする仕事?
「板金」と聞くと、車のキズやヘコミを直す自動車板金を思い浮かべる方もいるかもしれません。しかし、建設業における板金、すなわち「建築板金」は、建物を金属板で守り、美しく仕上げる専門職です。
建築板金は、主に薄い金属板(銅、ガルバリウム鋼板など)を使って、建物を雨風から守り、美観を整える重要な役割を担っています。具体的には、建物の以下の部分を担当しています。
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屋根(金属屋根)
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外壁
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雨樋(あまどい)
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水切り(雨水が壁を伝わないようにする細工)
板金職人の「技」が光る瞬間
彼らが金属板に施す加工は、まさに職人技です。
金属板を現場の状況に合わせて切る、曲げる、折り曲げるといった加工を施し、立体的な形状へと変えていきます。使用するのは、専門の鋏(はさみ)や折り曲げ機といった道具たち。
この仕事で最も重要な技術の一つが「雨仕舞い(あまじまい)」です。これは、建物の内部に雨水が絶対に入らないようにするための技術の総称です。外見では見えない部分に工夫を凝らし、雨水がスムーズに流れる道筋を作り出します。この「雨仕舞い」の良し悪しが、建物の耐久年数を大きく左右すると言っても過言ではありません。
2. やりがい・魅力・将来性について
板金職人が感じる「モノづくりの魅力」
彼らは、ただ屋根を貼っているわけではありません。
一枚の平らな金属板に命を吹き込み、立体的な製品へと作り変える創造的な楽しさがあります。自分の手で加工した金属が、建物の重要な一部分となり、何十年も人々の生活を守り続けるという事実は、大きな誇りと達成感を与えてくれます。
目立たないけれど超重要!「雨から建物を守る」使命
板金工事は、建物の最後の砦です。
適切に施工された金属板は、雨漏りを防ぐだけでなく、建物の断熱性を高め、外部の衝撃から構造材を守ります。つまり、板金職人の仕事は、建物の長寿命化と、そこに住む人々の安全・快適な暮らしに直結しているのです。
なぜ板金工の需要はこれからも安定しているのか?
板金工は、高い技術が必要な専門職であり、その需要はこれからも安定しています。
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リフォーム・改修工事の増加: 日本の住宅の老朽化に伴い、古い屋根や外壁、雨樋を新しくするリフォーム・改修工事の需要は非常に高まっています。
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災害対策としての重要性: 軽量で耐久性の高い金属屋根(ガルバリウム鋼板など)は、地震や台風対策としても注目されており、その技術を持つ職人は今後ますます必要とされます。
未経験からでも、板金技能士などの資格取得を目指し、見習いとして技術を磨くことで、将来性のあるキャリアを築くことができます。
3. 日常や豆知識について
職人の「あるある」と苦労
知人のエピソードにもあるように、天候と体力との戦いです。
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真夏の屋根の灼熱、真冬の金属の冷たさ。
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高所作業に伴う常に張り詰めた安全意識。
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様々な現場を回るため、車が移動事務所となり、短い昼休憩は車中で済ませる。
こうした過酷な日常があるからこそ、完成時の達成感はひとしおです。
屋根材・外壁材の種類と選び方
近年、一般住宅でよく使われる金属板にガルバリウム鋼板があります。軽量で耐久性、耐食性に優れているため、特にリフォームで選ばれることが増えています。プロは、建物の立地や予算に応じて、最適な素材を提案し、その特性を最大限に活かした施工を行います。
「雨樋」が詰まる原因と自分でできる簡単お手入れ
雨樋は、屋根から流れる雨水をスムーズに排水するための重要な部品ですが、落ち葉や砂が溜まって詰まりやすい部分でもあります。
詰まりを放置すると、建物の基礎や外壁を傷める原因になります。プロの視点から言えば、定期的な清掃(特に雨樋の中や、排水口付近)が最も重要です。ご自身で手の届く範囲でこまめにチェックするだけでも、建物の寿命を延ばすことにつながります。
このブログを通して、過酷な環境で建物を守る板金職人と、それを支えるご家族の存在に、少しでも関心を持っていただけたら幸いです。