費用と安心を守る!契約書「4つの視点」をシンプル解説

特にトラブルになりやすいポイントを、「費用」「もしもの時」「退去」「安定性」の4つの視点に分けて解説します。

 

 視点1:費用と金銭の「払い方」をチェック

この視点では、「いくら払うのか」だけでなく、「払ったお金がどうなるのか」、そして「突然費用が増えないか」を確認します。

  • 落とし穴①:入居一時金(前払金)の「償却ルール」

    • 一番高額なこの費用は、施設に預ける積立金ではありません。入居と同時に使われ始めるお金です。

    • 【確認すべき点】

      • 初期償却(入居した瞬間に返ってこなくなるお金)の割合が何%か?

      • 残りが何年間でゼロになるのか(償却期間)

    • もしもの時に返ってくるお金(返還金)は、この償却期間と、退去したタイミングで決まります。期間が長すぎると、早く退去してもほとんど返ってきません。

  • 落とし穴②:施設の倒産リスクへの備え(保全措置)

    • 高額な一時金が、施設が倒産した時に守られる仕組みがあるか確認します。契約書に「保全措置」に関する記載がなければ要注意です。

  • 落とし穴③:月額費用に「どこまで含まれるか」

    • 「管理費」の中に、居室の水道光熱費や日常消耗品費が含まれているか確認します。

    • 【隠れた出費】 おむつ代、理美容代、外部の専門医にかかる費用などは、月額費用とは別に請求されます。月々の総支払額を計算する際、これらを見落とさないように注意が必要です。

視点2:医療・介護の「限界点」をチェック

入居者の状態が悪化し、より手厚いケアが必要になったとき、施設がどこまで対応できるか、つまり施設の「キャパシティ」を確認します。

  • 確認点①:職員の「配置人数」と「夜間体制」

    • 日中の職員体制だけでなく、深夜の最低配置人数を確認しましょう。夜間に転倒や急変があった際、迅速に対応できる人数が確保されているかが命に関わります。

    • 【見るべき数字】 介護職員1人あたりの入居者数(例:2:1、3:1など)

  • 確認点②:医療連携と「どこまで対応可能か」

    • 協力医療機関の名前や診療科目を確認し、入居者の持病に対応できるか確認します。

    • 【最重要】 胃ろう、透析、インスリン注射などの特別な医療処置が、施設内で可能か、契約書に具体的に記載されているかを確認します。

  • 確認点③:最後の時の「看取り」対応

    • 「終末期ケア」「看取り」について、施設が明確な方針と体制を持っているかを確認します。最期まで住み慣れた場所で過ごしたいという希望に応えられるかが分かります。

 

視点3:退去させられる「条件」をチェック

施設側から契約を一方的に解除され、退去を求められる条件は、最も恐ろしいリスクの一つです。特に曖昧な表現がないか、詳しく見てください。

  • 落とし穴:施設の対応能力を「超えた」とは?

    • 契約解除の条件に「他の入居者へ迷惑をかける行為」「施設の提供できる介護レベルを超えた場合」といった表現がないかを確認します。

    • 【確認すべき点】 「介護レベルを超えた」とは具体的にどういう状態を指すのか(例:医療処置が〇種類以上になった場合、常に2人体制が必要になった場合など)、具体的な線引きを職員に質問し、メモに残しましょう。

    • 長期の利用料滞納はもちろん退去理由になりますが、金銭以外の理由で追い出されないよう、基準を明確にしておくことが重要です。

  • 確認点:身元引受人・連帯保証人の「責任範囲」

    • 身元引受人は、緊急時の連絡や退去時の身柄引き取りを担うのが一般的です。

    • 連帯保証人は、入居者の利用料滞納に対し、金銭的な責任を負います。この2つの役割が契約書で明確に分けられているか、または一人が両方の責任を負うのかを確認しましょう。

 

 視点4:法人の「安定性」をチェック

契約の相手である運営法人が、長期的に安定して施設を運営できる体力があるかを確認することも、費用と安心を守る上で欠かせません。

  • 確認点:法人の財務状況

    • 「重要事項説明書」には、法人の直近3年間の事業実績などが記載されているはずです。経営が安定しているか、赤字が続いていないかを確認しましょう。

    • 入居一時金保全措置が講じられていることは、この安定性のリスクを補う重要な要素です。

  • 確認点:居室の権利形態

    • 居室の契約が、「賃貸借契約」「利用権契約」かを確認します。

      • 賃貸借契約は、アパートを借りるのと同じく、居住権が強く守られます。

      • 利用権契約は、居室の利用と介護サービスを受ける権利がセットになったもので、施設運営者の意向が反映されやすい側面があります。

 

最後に:契約書にサインする前に…

複雑な契約書や重要事項説明書は、専門家であっても読み込むのに時間がかかります。ご家族だけで全てを理解し、施設の担当者に詳細な質問をするのは大きな負担です。

当事務所では、これらの契約書を法的な視点からチェックし、特にリスクの高い条項を抽出し、ご家族に代わって「何を質問すべきか」を明確化するサポートを行っています。

富山県内で老人ホーム入居契約の最終確認でお困りの際は、お気軽にご相談ください。専門家の視点で、大切なご家族の「安心」を一緒に守ります。

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