「遺言書」と聞くと、身構えてしまう方も多いかもしれません。

しかし、遺言書は大切な家族にあなたの思いや希望を伝えるための有効な手段であり、相続を円滑に進める上で非常に重要です。ここでは、遺言書の作成年代の傾向から、作成してよかったと感じるポイント、そしてよくある相続トラブルとその対策までを解説します。

 

まずは、遺言書を作る年代は?年代別ランキング

法律上は満15歳から遺言書を作成できますが、実際に作成する年代には傾向があります。

直接的なランキングデータはありませんが、複数の調査から、70代が最も遺言書を作成している年代であることが分かっています。自身の高齢化や、残された家族への配慮から作成を決意する方が多いようです。定年退職されてやっと、ご自分を見つめ直す時間ができる方も多いでしょう。

ただし近年では、50代半ばから遺言書を作成する人が増えており、若年化の傾向も見られます。これは、がん告知や終活や相続への意識が高まっているためと考えられます。また、子育てもひと段落という年代でもあります。

 

日本財団の調査によると、遺言書を作成してよかったと思うことのランキングは以下の通りです。

  1. 気持ちの整理になった(44.9%)

  2. 相続トラブルの心配が減った(40.6%)

  3. 自分の財産の使い道を自分の意思で決められた(39.1%)

  4. 死後の不安が減った(30.4%)

  5. 安心して老後を過ごせるようになった(26.1%)

この調査結果から、遺言書を作成するメリットは、単に財産を整理するだけでなく、精神的な安心感を得ることにあることがわかります。

 

遺言書で起こりがちな相続トラブルとその対策

せっかく遺言書を作成しても、不備があると無効になったり、かえって相続トラブルの原因になったりすることがあります。主なトラブル事例と対策は以下の通りです。

 

1. 遺言書が無効になるケース

  • 形式の不備: 日付がない、署名や押印がない、全文が自筆でない(パソコン作成や代筆)など。私の父は日付けがない自筆証書遺言でした。

  • 遺言能力の欠如: 認知症などで、遺言作成時に本人の意思能力がなかったと判断される場合。公正証書遺言の場合は、公証人がきちんと意思能力を判断するため、このようなことなないです。

対策: 法律の専門家である公証人が作成する公正証書遺言を利用すれば、形式の不備による無効のリスクを回避できます。また、公証人・証人2人が厳粛に遺言者の判断能力をチェックしますので、説得力が違ってきます。

 

2. 相続人同士の紛争を招くケース

  • 内容の不公平: 特定の相続人だけに全財産を遺すなど、他の相続人の「遺留分」(法律で保障された最低限の遺産取得分)を侵害する内容の場合、遺留分侵害額請求のトラブルにつながります。ネット現代で遺留分を知らない人は、ほぼいないです。

  • 財産の不明確さ: 「自宅を長男に」と書かれていても、複数の不動産を所有している場合など、どの財産を指すのかが特定できない。

  • 紛失・隠蔽: 自宅で保管する自筆証書遺言は、紛失したり、一部の相続人に隠されたりするリスクがあります。

対策: 遺言書作成の際は、財産を具体的に特定し、相続人全員の遺留分に配慮することが重要です。また、法務局で遺言書を保管する制度を利用すれば、紛失や隠蔽のリスクを避けられます。

遺言書は、あなたの最期の意思を尊重し、家族の絆を守るための大切なメッセージです。トラブルを未然に防ぎ、円滑な相続を実現するためにも、専門家への相談・公正証書遺言の作成を検討してみましょう。

日本の80歳代における認知症の割合は、厚生労働省の調査などによると、5人に1人以上とされています。

近年、認知症と診断される方は増加傾向にあり、もはや誰もが直面する可能性のある問題です。家族が認知症になったとき、介護費用や日々の生活費はどうすればよいのでしょうか? 多くの方が知らない、「預金凍結」という深刻な問題と、それを未然に防ぐための対策について解説します。

 

1. 認知症になると「財産が凍結」される?その恐ろしい仕組みとは

ご本人の判断能力が低下すると、銀行は口座の不正利用を防ぐために預金口座を凍結する可能性があります。たとえご家族であっても、本人の意思が確認できない状態では預金を引き出すことはできません。これは、ご本人の判断能力がない状態での契約は法的に無効と判断されるためです。

その結果、「介護費用が払えない」「施設への入所費用が用意できない」といった深刻な事態を招き、大切なご家族の生活が立ち行かなくなる恐れがあります。

 

2. 「財産凍結」を防ぐための法的対策

このリスクを未然に防ぐためには、ご本人の判断能力が低下する前に法的な対策を講じることが不可欠です。以下に代表的な3つの方法をご紹介します。

  1. 家族信託: 認知症になった後でも、家族が財産を管理・運用できるよう、ご家族を信頼して財産を託す仕組みです。

  2. 財産管理委任契約: 判断能力があるうちに、信頼できる人に財産管理を任せる契約です。

  3. 任意後見制度: ご本人が、判断能力が低下したときに備えて、あらかじめ信頼できる人を後見人として選んでおく仕組みです。

これら3つの対策はすべてご本人との契約に基づいているため、判断能力が低下してからでは利用できません。後悔しないためにも、早期の対策が重要となります。

 

3. なぜ行政書士に相談すべきなのか

これらの手続きは専門的な知識が必要で、ご家族だけで進めるのは非常に大きな負担となります。

行政書士は、ご家族の状況を丁寧にヒアリングし、最適な対策(家族信託、財産管理委任契約、など)をご提案できます。また、煩雑な契約書の作成や公証役場での手続きを代行することで、ご家族が安心して介護に専念できるようサポートいたします。

 

認知症による財産凍結は、知識があれば防げるリスクです。

ご本人やご家族が安心して暮らせるよう、できる限りの対策を講じましょう。

私自身、ケアマネジャーの経験もあるため、介護現場やご家族の不安を深く理解しています。

その経験を活かし、皆さまが安心して介護に臨めるよう、法的な面から全力でサポートいたします。

まずは、お気軽にご相談ください。

エンディングノートが単なる形式的なものではなく、人生を整理し、大切な人へ想いを伝えるためのツール?

1. 週刊誌に載るほど「エンディングノート」が注目される理由

 

先日、高岡の先輩行政書士から「週刊誌にエンディングノートの記事が出ていたよ」と教えていただき、早速本屋に直行しました。

そこには、「おひとりさまのためのエンディングノート 財産&相続編」と題された記事が。基本情報から始まり、不動産や金融資産、公共料金、さらにはデジタル資産まで、細かく記入する項目が示されていました。

「死」についてオープンに語る文化が根強いとは言えない日本で、なぜ今これほどまでにエンディングノートが注目されているのでしょうか?

 

2. エンディングノートは「頭の中の整理」から始まる

記事はさらに、相続の基本的な知識や「遺言書による自分らしいお金の使い方」「遺贈寄付」について触れていました。

エンディングノートを記すことは、自分の大切なもの、そうでないものを区別するきっかけを与えてくれます。これは、頭の中を整理し、人生の終わりに向けた「自分らしさ」を形にするための第一歩です。

80歳代の母も、「頭の中を整理したい」と話していたのを聞き、今度帰省する際には、このエンディングノートを買って渡そうと思っています。

 

3. エンディングノートに書くべきこと

週刊誌の記事にもあったように、エンディングノートに記入すべき内容は多岐にわたります。

  • 基本情報: 氏名、生年月日、連絡先など

  • 各種証明書: 年金手帳や保険証券、不動産の権利書などの保管場所

  • 財産情報: 不動産や預貯金、株式などの金融資産、借入金など

  • 生活情報: 公共料金の支払い方法、クレジットカード、デジタル資産(SNSアカウントなど)の取り扱い

  • 希望・想い: 介護や延命治療の希望、お葬式、お墓、そして家族へのメッセージ

これらを整理することで、残された家族が困惑することなく、スムーズに手続きを進めることができます。

 

4. まとめ:エンディングノートは、未来への大切なバトン

生き物には必ず終わりがあります。その時を迎えるときに、自分らしさをなくしたくないものです。

エンディングノートは、法的な効力を持つ遺言書とは異なりますが、自分の大切な想いを未来に伝えるための「大切なバトン」です。

ご自身の意思を形にするためには、まず「書く」という行動から始めてみませんか?分からないことや心配なことがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

高齢の親を持つ皆さま、こんな不安を感じたことはありませんか?

「母が認知症になった後、知らない間に勝手に婚姻届を出されて、相続財産の半分を赤の他人に持っていかれるのではないか…」

「遠方に住んでいるので、母の様子を頻繁に見に行けず、悪質な養子縁組をさせられていないか心配だ…」

これは、ただの心配事ではありません。残念ながら、実際に起きており、決して珍しくない問題です。

 

実際にあった話:「母の再婚相手」と名乗る見知らぬ男性

 

これは実際にあったケースです。独り暮らしの母親(80代)が、訪問販売業者と親しくなりました。最初は親切なふりをしていたその男性が、母親が認知症の初期症状を見せ始めたのを見計らって、勝手に婚姻届を提出してしまったのです。

息子や娘は、母親が遠方に住んでいたり、連絡をあまり取っていなかったりしたため、この事実をすぐには知りませんでした。母親が施設に入ることになり、財産整理をしようとして戸籍謄本を取り寄せたところ、見知らぬ男性と婚姻関係にあることが発覚し、問題となりました。

男性は、母親の意思能力が不十分な状態を利用して婚姻届を提出し、法的に配偶者の地位を得て、母親が亡くなった際に遺産を相続するつもりでした。

もし、不正な婚姻届が受理されてしまうと、その男性は法的に母親の配偶者となり、母親が亡くなった場合、遺産の半分を相続する権利を得てしまいます。

この事実を覆すには、家庭裁判所に婚姻無効確認の訴訟を起こす必要があります。しかし、この手続きには多大な時間と費用がかかり、その間、大切な親の財産は凍結されてしまうのです。

 

不正な届出を確実に防ぐ「不受理申出制度」

 

このような悲劇を防ぐための公的な制度が「不受理申出制度」です。

これは、あらかじめ役所に「不受理申出書」を提出しておくことで、申出をした本人が役所の窓口に出頭して本人確認ができない限り、特定の戸籍届出(婚姻、離婚、養子縁組など)を受理しないようにするものです。

もし、親の意思に反する婚姻届などが提出されても、この制度を利用していれば、役所はそれを受理せずに返却してくれます。

ただし、この制度にはひとつ大きな注意点があります。それは、「本人が自らの意思で手続きする必要がある」ということです。親がすでに認知症で意思能力が十分にない状態では、この制度を利用できません。

だからこそ、この制度は「親がまだ元気なうちに、将来の不安に備えて、親子で一緒に手続きしておく」ためのものだと考えてください。

 

まずは専門家である行政書士にご相談ください

 

大切なご家族の財産を守り、将来にわたる安心を築くためには、早めの準備と行動が何より重要です。

もしご不安な点があれば、お一人で悩まず、どうぞお気軽に当事務所までご相談ください。皆さまの疑問や不安を解消し、安心できる未来を築くお手伝いをさせていただきます。

エンディング「いつか来る」その日のために、今から準備できること

1. 遠方に暮らす親の想い、その背景にある「終活」

 

先日、九州で一人暮らしをしている母から電話がありました。父が亡くなって5年、生計の大部分を父に頼っていたこともあり、生活に難しさも感じているようです。

電話で興奮した様子で話していたのは、「永代供養をお寺にお願いした」ということ。お墓や仏壇の管理、住職さんの生活、お寺の運営など、親世代が抱える現実的な悩みに直面し、「終活」について考え始めたようです。

そして、お寺への感謝の気持ちとして、寄付を検討しているとのことでした。

寄付は、日本赤十字や日本盲導犬協会、ユニセフなど、生前お世話になったところへ行う方が多いですが、お寺もまた、地域社会を支える重要な存在であり、立派な寄付先の一つです。

 

2. 生前の口約束では実現しない?寄付の落とし穴

寄付は、生前に行うこともできますし、亡くなった後に財産の一部を寄付することも可能です。

しかし、もし亡くなった後に寄付をしたいのであれば、注意が必要です。

「生前、あそこに寄付したいんだ」と親が口で言っていても、その言葉が必ずしも相続人によって実行されるとは限りません。相続人にはそれぞれの考えがあり、故人の口頭の意向を尊重するかどうかは、相続人自身の判断に委ねられてしまうからです。

親の「寄付をしたい」という大切な想いを、確実に実現させるためにはどうすればいいのでしょうか?

 

3. 遺言書が「寄付の想い」を実現する鍵

そこで重要になるのが、「遺言書」です。

遺言書に寄付の意思と寄付先が明確に記載されていれば、遺言執行者は必ずその遺言書の内容に従って寄付を実行しなければなりません。遺言執行者とは、故人の財産を遺言書に記された通りに、確実に実行する役割を持つ人のことです。

例えば、遺言書に「私の財産のうち〇〇万円を、生前お世話になった〇〇寺に寄付する」と記されていれば、遺言執行者はその内容に沿って、確実に寄付を行うことになります。

このように、遺言書は単なる財産の分け方を決めるだけでなく、故人の「社会貢献したい」という想いや、「感謝の気持ち」を未来に伝えるための大切な手段なのです。

 

4. まとめ:親の願いを「確かな形」にするために

ご自分の意思を形にするためには、きちんとした手続きを取ることが何よりも大切です。遺言書を作成することは、親の願いを「確かな形」として残すための最も有効な方法です。

もしご不明な点やご心配なことがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。行政書士として、皆さんの大切な想いを実現するためのお手伝いをさせていただきます。

「相続」と聞くと、まず戸籍を収集して法定相続人を調べる、というイメージを持つ方が多いのではないでしょうか?実は、この 「戸籍」という制度は、世界的に見るととても珍しい、日本独自の仕組みなんです。

今回は、日本の戸籍制度を軸に、世界の相続事情を比較しながら、それぞれの文化や価値観がどう影響しているかをご紹介します。

 

日本の相続:なぜ「戸籍」が不可欠なのか?

日本の戸籍は、「一組の夫婦とその未婚の子」を単位として、家族の身分関係を記録するユニークな制度です。この仕組みが、相続手続きにおいて非常に重要な役割を果たしています。

【戸籍の役割】

  • 法定相続人を漏れなく特定できる:日本の相続では、被相続人(亡くなった人)の出生から死亡までのすべての戸籍をたどることで、認知した子養子など、現在の戸籍だけではわからない相続人を見つけ出せます。

  • 手続きの利便性:不動産の名義変更や預貯金の払い戻しなど、あらゆる相続手続きで戸籍謄本が求められます。

このように、戸籍は日本の「家」という概念と深く結びついており、家族の歴史を公的に証明する役割を担っているのです。

 

海外の相続:戸籍がない国ではどうする?

日本の戸籍制度は効率的ですが、その反面、個人のプライバシーが家族全体に公開されてしまうという側面もあります。一方、欧米の多くの国では戸籍制度がなく、個人主義の考え方が色濃く反映されています。

【欧米の相続手続き】

  • 個別証明書が主流:出生、婚姻、死亡といった個々の身分事項は、「出生証明書」「婚姻証明書」といった個別の証明書で管理されます。

  • 「遺言書」が最重要:戸籍がないため、相続人全員を特定することが難しくなります。そのため、被相続人が自身の意思で財産を誰にどのように分配するかを明確に記した 「遺言書」が非常に重要になります。

遺言書を作成することで、相続人の特定をスムーズにし、遺産分割をめぐるトラブルを防ぐことができるのです。

 

韓国の事例:戸籍廃止と「個人」を尊重する社会へ

アジアの中でも、かつて日本の戸籍制度と似た制度を持っていた韓国では、2008年に戸籍制度が廃止されました。

【家族関係登録制度】 韓国が新たに導入した「家族関係登録制度」は、「個人」を単位として身分関係を記録します。戸主(家長)という概念がなくなり、目的別に5種類の証明書(基本証明書、家族関係証明書など)を使い分ける仕組みになりました。

この制度変更は、家父長制の思想から脱却し、個人のプライバシーと権利を尊重する社会へと移行する、大きな一歩だったと言えます。

文化と価値観が作る相続の形

日本の「家」を重んじる文化が戸籍制度に、欧米の「個人」を尊重する文化が遺言書文化に、そして韓国の「個人主義」への移行が戸籍廃止に繋がっています。

このように、相続のルールは、その国の歴史や文化、人々の価値観を色濃く反映しているのです。

ちなみに、日本の戸籍制度も進化を続けており、2024年からは本籍地以外の役所でも戸籍謄本が取れる「広域交付制度」が始まり、利便性が大きく向上しました。戸籍の広域交付制度は、戸籍に記載されている本人、その配偶者、および直系親族(父母、祖父母、子、孫など)であれば、本籍地以外の全国の市区町村の窓口で戸籍謄本を取得できるようになりました。代理人や郵送による請求はできません。

この制度は、2024年3月1日から始まりました。これにより、遠方にある本籍地の役所に出向く必要がなくなり、相続手続きなどで戸籍を収集する際の負担が大幅に軽減されました。

 

氏名へのふりがな制度

2024年5月24日から、氏名にふりがなを記載する制度も始まりました。

  • 氏名の読み方の公的証明: 今までは住民票に記載されるふりがなが通称としての扱いであったのに対し、今後は戸籍にもふりがなが記載されるため、氏名の読み方が公的に証明されるようになります。

  • スムーズな行政手続き: 読み方が正確に登録されることで、行政手続きや金融機関での手続きがより円滑に進むことが期待されています。

これらの改正は、戸籍制度の利便性を高め、国民の生活をより便利にすることを目的としています。

日本の戸籍制度も、利便性を高めるための改正が進んでいます。このブログが、皆さんの身近な「戸籍」や「相続」について、新たな発見をもたらしてくれることを願っています。

家族信託とは、財産を持つ人(委託者)が、信頼できる家族(受託者)に自分の財産を託し、その財産の管理や承継を任せる仕組みです

まずは、家族信託の簡単な仕組みを例にとって説明します。

例えば、父(委託者)が認知症になった場合に備えて、自分の財産(不動産や預金など)の管理を息子(受託者)に任せたいと考えたとします。

  1. 信託契約を結ぶ: 父と息子で「信託契約」を結びます。

  2. 財産を託す: 信託契約に基づき、財産の名義を息子(受託者)に変更します。この際、預金については「信託口口座」を開設し、その口座に資金を移します。これにより、信託された財産は「信託財産」として、息子の個人的な財産とは法的に区別されます。

  3. 受託者が管理する: 息子は、信託契約で定められた目的(例:父の生活費や医療費に使う)に従って、信託財産を管理・運用します。

これにより、父が認知症になっても、家庭裁判所の関与なしに、息子がスムーズに父の財産を管理できるようになります。

 

家族信託の主なメリット

  • 意思能力喪失時の備え: 委託者が認知症などになっても、あらかじめ定めた家族が財産管理を継続できます。

  • 柔軟な財産承継: 遺言ではできない「財産を二世代、三世代先に引き継がせる」といった複雑な承継の仕組みを設計できます。

  • 裁判所の関与が不要: 後見制度のように、家庭裁判所への定期的な報告や手続きが不要なため、手続きが簡素です。

信託における受託者は、信託の目的を確実に達成するために、非常に重要な役割を担います。受託者選びを失敗すると、財産の管理や承継が滞り、家族間のトラブルに発展するリスクもあります。

ご質問の通り、受託者は「信頼関係が築けている人」を選ぶことが大原則ですが、その「信頼」がどのようなものか、具体的な失敗例を交えて解説します。

 

受託者選びの3つのポイント

受託者を選ぶ際には、感情的な信頼だけでなく、以下の3つの観点から客観的に判断することが重要です。

  1. 管理能力と専門性 信託財産が不動産や有価証券など複雑なものである場合、適切な管理・運用を行うための知識や経験が必要です。

    • 失敗例: 財産管理に不慣れな家族を受託者にした結果、信託した不動産の修繕を怠ったり、適切な投資判断ができず財産価値を損ねてしまった。

    • 望ましい受託者:

      • 財産管理の経験が豊富で、会計や法律に関する基本的な知識がある人。

      • 専門家と連携して、適切なアドバイスを求められる人。

  2. 誠実性と責任感 受託者は、信託契約の内容に忠実に従い、受益者の利益のために行動する義務(忠実義務)を負います。

    • 失敗例: 受託者が私的な目的で信託財産を流用したり、他の親族に不公平な分配を行った結果、受益者から訴えられてしまった。

    • 望ましい受託者:

      • 信託の目的を深く理解し、その実現に真摯に取り組むことができる人。

      • 財産管理の記録(帳簿)を正確につけ、受益者への報告を怠らない人。

  3. 利害関係がないか 受託者自身が信託財産から直接的な利益を得る立場にあると、公平な管理が困難になる場合があります。

    • 失敗例: 受託者(長男)自身が受益者の一人である場合、他の受益者(次男、長女)の意向を無視して、自分に有利なように財産を管理・処分してしまった。

    • 望ましい受託者:

      • 信託財産から個人的な利益を得る可能性が低く、中立的な立場で管理できる人。

      • 複数の受益者がいる場合は、すべての受益者との関係が良好で、調整役を担える人。

 

信託は、単に財産を託すだけでなく、将来のトラブルを未然に防ぐための重要な手段です。受託者選びに迷った場合は、以下の選択肢も検討してみてください。

  • 専門家に依頼する: 報酬はかかりますが、専門的な知識と豊富な経験で、公正かつ確実に信託を運営してくれます。

  • 複数の受託者を選ぶ: 家族と専門家を共同受託者とすることで、家族間の連携と専門家のチェック機能の両方を活かせます。

受託者は、あなたの思いを未来に伝えるための「大切なパートナー」です。単なる親しい人というだけでなく、客観的な能力と責任感を併せ持つ人を選ぶことが、信託を成功させる鍵となります。

お困りやちょっとして疑問がございましたら、当事務所にお気軽にご相談ください。

ご両親がお亡くなりになり、ご実家を整理する必要が生じたとき、何から手をつけて良いか分からず途方に暮れてしまう方は少なくありません。

私の実家は九州の大分にあります。余計なものは買わない主義らしく、綺麗に整っています。一方で、夫の実家は令和6年能登半島地震で被災しており、片付けはより複雑で慎重な対応が求められます。頭を抱えています。

「大量の荷物を前にどうすればいいんだろう?」 「どこに貴重品があるか分からない…」 「業者に頼むのは少し不安…」

こうしたお悩みをお持ちの方へ向けて、今回は相続とご実家の整理・遺品整理をスムーズに進めるためのポイントと、注意すべき点をお話しします。

 

1. 遺品整理の前に、まず「相続」を考える

多くの方が「片付け」から始めようとされますが、その前に絶対にやっておくべきことがあります。それが相続の手続きと財産の確認です。

故人の遺品は、法的には相続人全員の「共有財産」となります。そのため、ご自身の独断で物を処分してしまうと、後々の遺産分割協議でトラブルに発展する可能性があります。

【片付けを始める前に確認すべきこと】

  • 遺言書の有無の確認: まずは遺言書を探しましょう。遺産分割に関する故人の意思が記されている可能性があります。

  • 財産に関する重要書類の捜索: 預金通帳、銀行カード、不動産の権利証、株券、保険証券、年金手帳など、相続手続きに不可欠な書類は、片付けを始める前に必ず探して確保してください。

タンスや金庫、引き出しの中など、故人が大切に保管していた場所を、ご家族で協力して探すことをお勧めします。

 

2. 遺品整理業者との賢い付き合い方

「遺品整理は自分たちだけでは無理だ…」と感じたとき、専門の業者に依頼するのは非常に有効な選択肢です。しかし、一部には残念ながら、不当な高額請求や金品の持ち出しといった悪質な行為を行う業者も存在します。

安心して依頼するために、以下の3つのポイントを押さえて業者を選びましょう。

【1】「遺品整理士」の在籍を確認する 「遺品整理士」は、故人と遺族の気持ちに寄り添い、法律を遵守して適切な作業を行うための民間資格です。この資格を持つ従業員が在籍している業者は、信頼できる目安の一つとなります。

【2】「古物商許可」の有無を確認する 遺品整理業者の中には、故人の品物を買い取るサービスを提供している会社も多くあります。しかし、この「買い取り」には古物商許可が必須です。この許可を持たずに買い取りを行うことは法律違反となります。許可の有無は、その業者が法律を遵守しているかを見極める重要なポイントです。

【3】必ず複数の業者から見積もりを取る 一社だけでなく、複数の業者から相見積もりを取ることで、料金やサービス内容を比較検討することができます。極端に安すぎる、あるいは高すぎる見積もりには注意が必要です。

 

3. トラブルを避ける一番の秘策は「事前の整理」

それでも、やはりご不安な気持ちが残る方もいらっしゃるでしょう。そうした方にお勧めしたいのが、「ご家族である程度整理してから業者に依頼する」という方法です。

業者に依頼する前に、ご家族で協力して、以下のような作業を事前に済ませておきましょう。

  • 金品・貴重品・重要書類の回収: まずは現金や通帳など、お金に関わるものを確実に回収してください。

  • 思い出の品の選別: 写真、手紙、日記など、ご家族にとって大切な品は、事前に持ち出すか、業者に「絶対に処分しないでほしい」と明確に伝えておきましょう。

  • 大まかな仕分け: 「捨てるもの」「残すもの」を大まかに分類しておくことで、業者の作業量が減り、結果的に費用を抑えることにも繋がります。

このように事前に準備しておくことで、悪意のある業者による盗難リスクを最小限に抑え、また、ご自身にとって本当に大切なものと向き合う時間も確保できます。

 

最後に

遺品整理は、故人との思い出を整理する大切な時間でもあります。物理的な片付けだけでなく、心の整理も並行して進める必要があります。

ご実家の整理や相続手続きについてご不安な点、お困りの点がございましたら、お一人で抱え込まず、お気軽に当事務所にご相談ください。専門家として、皆様が安心して手続きを進められるよう、全力でサポートさせていただきます。

知っておきたい!意外な相続財産と見落としがちな手続き

相続というと、多くの方が現金や預貯金、不動産を思い浮かべるでしょう。しかし、財産はそれだけではありません。故人が残した意外なものも、相続の対象となることがあります。遺産分割や相続税申告で困らないよう、知っておくべきポイントを解説します。

 

1. 意外な相続財産の例

 

ゴルフ会員権・リゾート会員権

多くのゴルフ会員権やリゾート会員権は相続の対象です。ただし、会則によっては会員資格が失われる場合もあるため、事前に運営会社に確認が必要です。また、相続税の課税対象となり、取引相場や預託金の有無によって評価額が異なります。

 

著作権・特許権

故人が作家や発明家であった場合、著作権や特許権といった知的財産権も相続財産です。これらの権利は、今後も使用料やライセンス料を生み出す可能性があるため、その価値を正確に評価することが重要です。

 

仮想通貨

近年、問題となることが多いのが仮想通貨(暗号資産)です。故人が保有していた仮想通貨も相続財産となります。しかし、その存在やウォレットのパスワードが分からないと、相続人がアクセスできず、事実上「宙に浮いた財産」となってしまう可能性があります。

また、仮想通貨は価値の変動が激しいため、相続開始時(被相続人が亡くなった日)の価格で評価された後に、暴落してしまうリスクがあります。これにより、売却して得られる金額以上の相続税を支払う事態も起こり得るため、その扱いは慎重に行う必要があります。

 

漁協・農協の出資持分

漁業協同組合(漁協)や農業協同組合(農協・JA)に出資していた場合、その出資持分も相続財産です。ただし、株式会社の株とは異なり、組合員の地位は相続されません。相続人は出資持分の払い戻しをそれぞれの協同組合に請求する権利を相続することになります。

 

2. 相続財産ではないが手続きが必要なもの

 

iDeCo・企業型DC

iDeCo(個人型確定拠出年金)や企業型DC(企業型確定拠出年金)は、相続財産ではありません。これらは「みなし相続財産」として扱われ、相続税の課税対象となります。

死亡一時金を受け取るには、遺族が運営管理機関に請求手続きを行う必要があります。請求期限は故人の死亡から5年以内と定められており、期限を過ぎると受け取れなくなります。また、税制上の注意点として、死亡から3年以内に受け取った場合は、相続税の非課税枠(500万円×法定相続人の数)が適用されますが、3年を超えてから受け取ると、この非課税枠が適用されず、一時所得として所得税や住民税の課税対象となる可能性があります。

 

企業型DB・国民年金基金等

企業型DB(確定給付企業年金)や国民年金基金に加入していた場合も、遺族が受け取れる一時金があります。これらの制度からの死亡一時金は、みなし相続財産として扱われます。特に、通算企業年金制度では、年金を受け取る前の死亡でも一時金が受け取れる場合がありますので、確認が必要です。

 

故人が受給していなかった年金

故人が年金を受給できる年齢に達していたにもかかわらず、繰り下げ受給などの理由でまだ請求していなかった場合、その未支給の年金は相続財産ではありません。これは遺族が請求できる「未支給年金」として扱われます。遺族が年金事務所に請求することで、故人が生きていれば受け取れたはずの年金(死亡した月までの分)を受け取ることができます。

年金の受給権には時効があり、故人が亡くなった日の翌月から5年以内に手続きをしないと、権利が消滅してしまいます。また、受け取れる年金分は、死亡日までの期間分に加えて、過去5年間にさかのぼって請求することが可能です。

 

サブスクリプションサービス

故人が契約していたサブスクリプションサービスは、自動的に解約されません。料金の請求が続くため、遺族は故人のクレジットカード明細やメール履歴を調べて、一つひとつ解約手続きを行う必要があります。これは金銭的な価値のある「財産」というよりは、「デジタル遺品」として整理すべきものと言えるでしょう。

 

3. スムーズな相続のために

このように、相続財産は多岐にわたります。遺族が故人の残した財産をすべて把握し、適切な手続きを行うことは容易ではありません。特に、故人しか知らない情報(デジタルアカウントのパスワードなど)が多い現代では、より複雑になっています。

このようなトラブルを避けるために、生前にエンディングノートを作成し、財産の一覧や各種アカウント情報をまとめておくことをお勧めします。また、相続に関するご相談は、専門家である行政書士に依頼することで、手続きの負担を軽減し、円滑な相続を進めることができます。

相続財産の調査や名義変更の手続きでお困りの際は、お気軽にご相談ください。

故人の想いを繋ぐ「墓じまい」と相続の切っても切れない関係性

墓じまいは、お墓を撤去・解体し、墓地を管理者に返還することを指します。行政手続きは、主に以下の流れで進めます。

 

1. 埋葬されている遺骨の取り出しと改葬許可の申請

墓じまいを始める前に、まず現在お骨が埋葬されているお墓から取り出す必要があります。遺骨を別の場所へ移す「改葬」を行うために、行政手続きが必要になります。

  1. 「改葬許可申請書」を入手

    • 富山県高岡市の公式サイトで「改葬許可申請書」をダウンロードすることができます

  2. 必要書類の準備

    • 改葬許可申請書: 墓地の管理者と新しい受け入れ先の両方から署名・捺印をもらう必要があります。

    • 埋蔵証明書: 現在お骨が埋葬されている墓地の管理者に発行してもらいます。

    • 受入証明書: 新しいお骨の埋蔵先(お寺、霊園、納骨堂など)に発行してもらいます。

    • 申請者の本人確認書類: 運転免許証やマイナンバーカードなど。

  3. 改葬許可証の交付

    • 上記の書類を揃えて役所に提出し、問題がなければ改葬許可証が交付されます。


2. 墓石の撤去と墓地の返還

改葬許可証が交付されたら、墓石を撤去し、墓地を更地にする作業を行います。

  1. 石材店への依頼

    • お墓を撤去・解体する専門の石材店に作業を依頼します。この際、墓地の管理者が指定する石材店がある場合が多いので、事前に確認が必要です。

  2. 遺骨の取り出し

    • 石材店が墓石を撤去する際、改葬許可証を提示し、遺骨を取り出します。

  3. 墓地の返還

    • 墓地を更地に戻し、管理者に返還します。


3. 新しい場所への遺骨の埋蔵

新しい納骨先が発行した「受入証明書」を揃えて、高岡市役所の市民生活課に提出します。書類に不備がなければ、「改葬許可証」が交付されます。

取り出した遺骨を、事前に決めておいた新しい場所(お寺、納骨堂など)に埋蔵します。この時、発行された改葬許可証を新しい埋蔵先に提出します。

手続きの流れは地域や墓地の管理者によって異なる場合があります。

特に近年、少子高齢化や核家族化が進む中で、「お墓の承継者がいない」「遠方に住んでいてお墓の管理が難しい」といった理由から、お墓を整理する「墓じまい」の相談が増えています。今回は、相続と墓じまいの関係についてお話ししたいと思います。

 

墓じまいは「相続財産」ではない?

まず知っておいていただきたいのは、お墓(墓地利用権)や祭祀財産は、民法上の「相続財産」には含まれないということです。

お墓や仏壇、位牌などは、祭祀承継者が引き継ぐことになります。祭祀承継者は、故人様の指定があればその方が、指定がなければ慣習に従って、または家庭裁判所の調停・審判によって決められます。

つまり、遺言書で「長男にすべての財産を相続させる」と書かれていても、お墓は必ずしも長男が引き継ぐとは限らないのです。この点が、一般的な相続と墓じまいの手続きを複雑にする要因の一つとなります。

 

墓じまいには「親族間の合意」が不可欠

墓じまいは、単にお墓を撤去するだけの話ではありません。故人様やご先祖様の供養に関わる非常に重要な決断です。そのため、法的な義務はありませんが、トラブルを避けるために親族全員の合意を得ることが不可欠です。

特に、遺骨の移転先や費用負担について、親族間で意見が分かれるケースは少なくありません。事前に丁寧な話し合いを重ね、合意書を作成しておくことで、後々のトラブルを防ぐことができます。

 

墓じまいの行政手続きは行政書士へ

墓じまいを行うには、「改葬許可申請」など、市区町村への複雑な行政手続きが必要です。

当事務所では、これらの手続きを代行し、皆様がスムーズに墓じまいを進められるようサポートしています。相続問題と合わせてご相談いただくことで、法的な側面だけでなく、ご家族の想いを尊重した最適な解決策をご提案いたします。

お墓のことでお悩みの方は、どうぞお気軽にやまもと行政書士事務所にご相談ください。

案外知らない葬儀費用についてお伝えします。

こんにちは、やまもと行政書士事務所です。

家族が亡くなり、覚悟はしていたものの一体どうすればいいのか?疑問がたくさんですよね。

ご家族が亡くなられた際、誰もが直面する「葬儀費用」「香典」「相続」という三つの問題。これらは複雑に絡み合っており、知識がないと後々のトラブルに発展する可能性があります。今回は、これらの関係を分かりやすく解説し、スムーズな手続きのためのポイントをお伝えします。

 

香典は誰のもの?

 

葬儀でいただく香典は、故人への弔意を示すとともに、葬儀の主催者である遺族への贈与とみなされます。そのため、法的には葬儀を執り行った「喪主」に贈られたものと解釈されるのが一般的です。

香典は故人の遺産ではないため、相続財産として他の相続人と分け合う必要はありません。

 

葬儀費用は誰が負担する?

 

葬儀費用は、原則として葬儀を主催した「喪主」の債務です。

しかし、実務上は、相続人全員の合意のもと、故人の預貯金など相続財産から支払われることが一般的です。これは、葬儀費用を相続税の計算で控除できることも理由の一つです。

特に注意が必要なのは、喪主が相続人でない場合です。この場合、故人の銀行口座から直接費用を引き出すことはできないため、喪主が立て替えた費用を後から相続人が精算するなどの対応が必要になります。

 

故人の銀行口座から葬儀費用を引き出す方法

 

喪主が故人の法定相続人であれば、故人の銀行口座が凍結されていても、「預貯金の仮払い制度」を利用して、葬儀費用を直接引き出すことができます。

この制度は、2019年の民法改正で新設されたもので、相続人全員の同意を待たずに迅速に費用を準備できる便利な仕組みです。

  • 引き出し上限額: 故人の預貯金残高と法定相続分に応じた金額、または150万円のうち低い方となります。

  • 必要書類: 故人や相続人の戸籍謄本、印鑑証明書などが必要です。

この制度を利用する際は、引き出した金額や使途を明確にし、領収書をすべて保管しておくことが大切です。

 

まとめ:トラブルを防ぐためのポイント

 

  • 香典は、原則として喪主のものであり、遺産には含まれません。

  • 葬儀費用は、原則として喪主の債務ですが、相続財産から支払うケースが多いです。

  • 喪主が相続人であれば、「預貯金の仮払い制度」で故人の口座から直接費用を引き出せます。

どの方法を選ぶにしても、最も大切なのは、家族や親族間で事前に十分に話し合い、合意を得ておくことです。葬儀や相続手続きでご不明な点がありましたら、お気軽にご相談ください。

公正証書遺言を作る際、最も重要なのが「遺言能力」の確認です。公証役場で公証人からどのような質問をされるのか、またその確認がなぜ重要なのかを解説します。

1. 遺言能力の2つの要件

遺言が法的に有効であるためには、以下の2つの要件を満たす必要があります。

  • 年齢の要件: 満15歳以上であること(親の同意は不要)。

  • 意思能力の要件: 遺言を作成する時点で、以下の3点を理解できる精神的な能力があること。

    1. 遺言の意味の理解: 自分の死後、法的な効力を持つ意思表示だと認識していること。

    2. 遺言内容の理解: 「誰に」「どの財産を」「どのくらい」与えるかを具体的に把握していること。

    3. 遺言結果の理解: 遺言によって、財産がどのように配分されるかを認識していること。

 

2. 公証人が行う「意思確認」とは?

公証人は、法律の専門家として、この「意思能力」を厳格に確認します。単に書類に署名・押印するだけでなく、遺言者と直接会って以下の点を多角的にチェックします。

  • 面談と質疑応答: 表情、言葉遣い、受け答えを通じて、意思疎通が可能か確認します。

  • 内容の確認: 遺言内容について、遺言者自身の言葉で説明できるか問いかけます。

  • 状況の確認: 遺言者が置かれている生活状況などを確認し、外部からの不当な影響を受けていないかを判断します。

 

3. 遺言能力が問題になりやすいケース

特に、以下のようなケースでは、遺言能力の有無が慎重に問われます。

  • 認知症(アルツハイマー病など)

  • 重い精神疾患(統合失調症や重度のうつ病など)

  • 重病による意識混濁

  • 薬物やアルコールの影響

 

4. 代理人が原案を持参した場合の注意点

代理人が遺言の原案を持ってきても、公証人が最終的に確認するのは遺言者本人の真の意思です。

もし、面談時に公証人が遺言者の認知機能に不安を感じた場合、手続きを中断して、医師の診断書や鑑定書の提出を求めることがあります。

 

5. なぜ医師の診断書が必要なのか?

証人は医学の専門家ではありません。医師の診断書は、遺言者の健康状態や認知機能に関する客観的な評価を提供してくれるため、公証人の判断を裏付ける重要な証拠となります。

診断書の要求は、将来的な相続争いを防ぎ、遺言の有効性をより確実にするための重要な手続きです。遺言者本人にとっては少し面倒に感じられるかもしれませんが、これは遺言を確実に執行させるために不可欠なステップなのです。

公正証書遺言は、公証人という専門家が関わることで、法的な有効性が高く、将来的な争いを防ぐ効果があります。多少の手間はかかりますが、ご自身の思いを確実に未来へ託すための、最も確実な方法の一つです。大切なご家族のために、公正証書遺言の作成を検討してみてはいかがでしょうか。

まさかの「無効な遺言書」に直面して

父はとても几帳面な性格でした。きっと遺言書も、法律に則ってきちんと調べて書くだろうと信じていました。ところが、父が遺した遺言書には日付がなく、母が銀行に持ち込んでも、法的には全く認められないものでした。

父は、まさか自分の死後に家族がもめることはないだろう、と楽観的に考えていたのかもしれません。それゆえに、細部まで詰めることなく、形式を欠いた遺言書になってしまったのだと思います。

「家族は仲が良いから大丈夫」という思い込み。これは、多くの方が遺言書作成をためらう大きな理由の一つです。しかし、どれほど仲が良くても、遺産を前にすると家族が対立するケースは決して少なくありません。

 

日本人が遺言書を書かないのはなぜ?

日本では昔から、「お金の話は下品」という考え方が根強く残っています。「清貧を美徳とする」という風潮も、お金や財産についてオープンに話すことを躊躇させてきました。特に、身内や親しい間柄で金銭的なことを話題にすることは、人間関係を損なう原因になると考えられがちです。

こうした文化的・心理的な抵抗感に加え、遺言書には法律で定められた厳格な形式があり、書き方を間違えると無効になる可能性があることも、作成を阻む要因となっています。

 

「死」を避ける文化から「未来」を考える文化へ

遺言書を作成する人の多くは70代以上とされています。定年退職でまとまった財産ができた時や、病気や高齢化で自身の身辺整理を考え始めた時など、人生の節目がきっかけになることが多いようです。

一方で、近年はNISAなどの新しい制度が注目され、特に若い世代ではお金に関する話題が以前よりオープンになりつつあります。これは、「人生100年時代」を見据え、自分の資産を守り、将来のために活かしていく必要性を感じているからです。

お金に対する意識は少しずつ変わってきていますが、まだ多くの高齢者は、遺言書を書くことは「死」を意識することにつながり、「縁起が悪い」と捉えがちです。しかし、遺言書は「死後の争いをなくし、大切な家族の未来を守るためのもの」と捉え直すことが重要です。

遺言書は、単に財産をどう分けるかを記す書類ではありません。それは、あなたが家族を想い、最期まで責任を果たそうとした証です。形式を整えておくことで、あなたの「想い」は法的に有効な「意思」となり、残された家族を守る力になります。

人生の最終章を穏やかに過ごすため、そして何より大切な家族が、あなたの死後に遺産を巡って争うことがないように、元気なうちにぜひ一度、専門家への相談を検討してみてはいかがでしょうか。

【実家で話そう】「うちは揉めない」は危険?円満な相続のために今できること

こんにちは。お盆休み、皆さんはどのように過ごされましたか?

富山高岡にも、県外からたくさんの帰省者が戻ってきています。我が家にも、東京で歯科医をしている息子が帰省し、久しぶりに家族で顔を合わせることができました。

「何食べたい?」と聞くと、返ってきたのは「お寿司!」という即答。さすがは"すし県"富山です。美味しいお寿司を囲んで話したいところでしたが、人気店はどこも長蛇の列で、今回は泣く泣く諦めることに。

そこで向かったのが、富山のソウルフード「8番らーめん」。ここもやはり混雑していましたが、懐かしい味に舌鼓を打ち、久しぶりの家族団らんを楽しみました。

さて、こうしてお盆に帰省し、歳を重ねた親と直接話す機会を持つと、「このままでいいのかな」と将来を考える方も多いのではないでしょうか。

「うちは揉めないから大丈夫」「遺言書なんて縁起でもない」

そう思っていても、親が亡くなり、いざ相続が始まると、今まで仲が良かった兄弟姉妹でも、それぞれの配偶者や家庭の事情が絡み合い、すんなりとはいかないものです。特に、不動産の相続は大きな悩みの種となります。すでに家を別に建てている方が多い今、実家をどうするかは大きな問題です。

 

財産は「開示」し、「意思」を残すことが大切

子にとって、親の財産は意外と知られていないものです。だからこそ、みんなが集まったお盆という貴重な機会に、財産について話し合うことをお勧めします。

そして、その話し合いの内容を、どの財産を、誰に渡したいかを「遺言書」として形に残すことが、家族が揉めないための最も有効な方法の一つです。

「うちは仲が良いから」と安心しているご家庭でも、いざお金を目の前にすると、欲しくなるのが人間です。それは自然な感情であり、だからこそ、親の意思を明確にしておくことが大切になります。

意外と知られていませんが、有効な遺言書がない場合、原則として法定相続分で分割されます。「お世話になった息子の嫁」や「可愛い孫(子供が生存している場合)」には、遺言書に記さないと相続権がないのです。

 

「安心してください。遺言書は何度でも書き換えられます」

遺言書は、一度書いたら終わりではありません。考えが変われば、何度でも書き直すことができます。

家族が集まるお盆だからこそ、将来の不安を解消するために、そして何より愛する家族の幸せのために、遺言書について話し合ってみてはいかがでしょうか。

愛するペットの将来について、万が一の事態に備えて考えたことはありますか?

私は大の動物好きで、小さな頃は動物園の飼育係になるのが夢でした。そして、物心ついた頃からずっと犬を飼い続けています。

実は、九州から富山へ嫁いだばかりの頃、知り合いもいない土地で、唯一の友達がわんこでした。ペットは本当に、家族そのものなんです。

私は時々泊りがけで家を空けるたびに、愛犬(黒柴)のまるちゃんのことが心配になります。夫に世話を頼んではいますが、「ご飯は食べさせてもらえたかな?」と不安になることも。

そして、ふと「もし自分に何かあったら、この子は一体どうなるんだろう」と心配になることがあります。

遺言書や負担付贈与など、ペットの世話を託す方法はいくつかあります。しかし、愛するペットを、ご自身の生前から死後まで、途切れなく確実に世話を託したいのであれば、近年注目されている「ペット信託」が最も有効な手段となります。

この記事では、ペットの世話を託す主な方法とその違いを解説します。

 

1. 負担付贈与と遺言書による負担付贈与

負担付贈与は、財産を贈与する代わりに、特定の負担(例えばペットの世話)を負ってもらう契約です。これを遺言書に記載したものが「遺言書による負担付贈与」となります。

  • 効力の発生時期: ご自身の死後に初めて効力が発生します。そのため、ご自身の生前に、病気や高齢でペットの世話ができなくなった場合は対応できません。

  • メリット:

    • 遺言書に記載することで、口約束よりも法的効力と確実性が高まります。

    • 遺言執行者を指定しておけば、その執行者が遺言の内容を確実に実行してくれます。

  • デメリット:

    • 効力がご自身の死後にしか発生しないため、生前のリスクには対応できません。

    • 遺贈を受けた人が負担(ペットの世話)を怠った場合、強制的に履行させるのが難しい場合があります。

 

2. ペット信託

ペット信託は、ご自身(委託者)の財産を信頼できる人(受託者)に託し、ペットの世話という目的のために管理・運用してもらう仕組みです。信託契約はご自身の生前に締結されます。

  • 効力の発生時期: 契約の締結時から効力が発生し、ご自身の生前から死後まで継続します。

  • メリット:

    • 連続したお世話: ご自身の体調や生活環境の変化に関わらず、愛するペットんの世話を確実に継続できます。

    • 強力な法的強制力: 受託者は契約内容を遵守する義務を負い、違反した場合は責任を追及される可能性があります。

    • 監督人による監視: 監督人を指定することで、受託者が義務を怠っていないか監視してもらうことができ、より安心です。

    • 財産の確実な管理: 信託された財産は、ペットの世話という目的にのみ使われるよう厳密に管理されます。

 

3. 生前贈与契約との違い

ご自身の生前に行う贈与契約には、「通常の生前贈与契約」と「死因贈与契約」があります。

  • 通常の生前贈与: 契約締結時に財産が移転します。

  • 死因贈与契約: 契約自体は生前に結びますが、効力はご自身の死亡時に発生します。つまり、ペットの世話を死後に託す目的で結んだ契約は、ご自身が亡くなったことで初めて実行される段階に入るのです。

ご自身の生前から亡くなった後まで、愛するペットの世話を途切れなく、そして確実に託したいのであれば、ペット信託が最も有効な手段と言えるでしょう。遺言書や負担付贈与では対応できない、生前のリスクにも備えることができるからです。

ご自身の状況に合わせて、専門家と相談しながら、最適な方法を検討されることをお勧めします。

遺言における特定団体への寄付と相続人

遺言書に寄付の記載があったら?遺言執行者の役割と注意点

遺言書に特定の団体への寄付(遺贈)が記載されている場合、その遺言書に「遺言執行者」が指定されていれば、その役割は非常に重要です。遺言執行者は、亡くなった方の最後の意思である遺言書の内容を確実に実現するための手続きを行う人物です。

 

遺言執行者の義務と相続人の同意

遺言執行者には、遺言書に記載された通りの寄付手続きを行う義務があります。たとえ相続人全員がその内容に反対したとしても、遺言執行者は独自の判断で寄付の項目を無効にすることはできません。遺言者の意思は法的に尊重されるため、遺言執行者はその意思を忠実に執行する職務を負います。遺言執行者がいる場合、遺言の内容と異なる遺産分割協議を行うには、相続人全員の同意に加え、遺言執行者の同意も必要となります(民法第1012条)。遺言執行者が相続人の意向に沿って寄付を中止したり、内容を変更したりすることは、その職務を正当に果たしたことにはなりません。

 

遺留分を侵害している場合の対処法

もし寄付の内容が法定相続人の遺留分(いりゅうぶん)を侵害している場合、法定相続人は、寄付を受けた団体に対して、侵害された遺留分に相当する金銭の支払いを請求できます。この「遺留分侵害額請求」は、相続人固有の権利です。

また、遺言書で相続人以外の人に遺贈がされている場合は、その遺贈を受ける人(受遺者)の同意がなければ、遺言書と異なる遺産分割を行うことはできません。

 

遺言書は、故人の最後の意思を尊重するための大切な書類です。しかし、遺言執行者の役割や、遺留分などの専門的な知識がないと判断が難しい場面も少なくありません。

トラブルを未然に防ぎ、故人の意思を正しく尊重するためにも、遺言書の作成時や、遺言内容に疑問が生じた際には、安易な自己判断をせず、専門家に相談することをお勧めします。専門家の力を借りることで、故人の想いを尊重しつつ、相続人全員が納得できる解決策を見つけることができるでしょう。

今回は、この二つの違いと、勘違いが招くリスクについて解説します

相続財産に借金が含まれている場合、相続人はその借金を引き継ぐことになります。しかし、これを回避するための方法として、「相続放棄」と「相続辞退」という二つの言葉が使われることがありますが、この二つは全く異なるものです。

 

相続放棄は、法律で定められた正式な手続きであり、必ず家庭裁判所に申し立てる必要があります

この手続きが完了すると、相続人はその相続に関して初めから相続人ではなかったものとみなされます。これにより、プラスの財産(預貯金、不動産など)だけでなく、負の財産(借金など)も一切引き継がなくなります。

  • 期限: 相続放棄には「相続があったことを知った日から3ヶ月以内」という期限があります。

  • 証明: 手続きが完了すると、家庭裁判所から「相続放棄申述受理証明書」が発行されます。これを債権者や法務局、金融機関へ提出することで、正式に相続放棄したことを証明できます。

 

「相続辞退」は法的な効力がない

一方、「相続辞退」は、法律上の用語ではありません。相続人同士の話し合いの中で「私は財産はいらない、放棄するから貴方たちで分けて。」などと意思表示する行為に過ぎず、法的な効力はありません。

このような合意は、あくまで相続人の間でのみ有効であり、債権者に対しては主張できません。そのため、債権者から借金の返済を求められた場合、辞退した人にも法律で定められた相続分に応じた返済義務が生じる可能性があります。

  • 遺産分割協議書への記載: 遺産分割協議書に「相続分を辞退する」旨を記載し、辞退した相続人も署名・押印します。

  • 注意点: 遺産分割協議書に「放棄する」と記載したとしても、それは法的な「相続放棄」とはなりません。この点を混同してしまうと、自分は借金から免れることができないという重大なリスクを負うことになります。

このように、相続には複雑な法律が関係してきます。安易な自己判断で行動するのではなく、専門家に相談するなどして、正しい手続きを理解することが大切です。

尊厳死という言葉を聞いたことはありますか?

これは、回復の見込みがない末期状態に陥った際、本人の意思に基づいて、過度な延命治療を避け、自然な形で穏やかな最期を迎えることを希望する意思表示です。

「安楽死」と混同されがちですが、安楽死は薬物などを用いて意図的に死を早めること。日本では法的に認められていません。尊厳死はあくまで、自然な死を受け入れるための選択です。

尊厳死宣言書は、もしもの時に備え、あなた自身の「死の迎え方」を家族や医療従事者に明確に伝えるための、非常に大切なツールなのです。

 

「尊厳死宣言公正証書」がもつ3つの大きな力

尊厳死の意思を伝える方法として、最も確実なのが「公正証書」にすることです。公正証書とは、公証人が作成する公的な文書であり、高い証明力を持ちます。この公正証書には、以下の3つの大きな力があります。

力1:あなたの意思を「公的に証明」する力

公正証書は、公証人があなたの意思能力を直接確認した上で作成されるため、法的に非常に強い証明力を持ちます。これにより、将来的に家族や親族間で意見が対立したり、意思が不明確だと疑われたりするトラブルを未然に防ぐことができます。

力2:家族の「重い決断」を軽くする力

もしもの時、家族は「延命治療を続けるべきか、やめるべきか」という、非常に重く、つらい決断を迫られます。尊厳死宣言公正証書があれば、あなたの明確な意思が示されているため、家族はその決断を自信を持って下すことができます。これは、愛する家族への最後の思いやりと言えるでしょう。

力3:医療現場における「高い信頼性」

医療現場では、法的に有効な文書である公正証書は尊重される傾向にあります。日本尊厳死協会の調査によると、リビング・ウィルを提示された医師の9割以上がその意思を尊重したというデータもあります。しかし、残念ながら、すべての医療機関で必ずしも従わなければならないという法的な強制力はまだありません。それでも、公正証書にすることであなたの意思は最大限尊重される可能性が高まります。

尊厳死宣言公正証書は、ご自身の最期を「自分らしく」過ごすための、確かな準備です。ご興味がある方は、ぜひご相談ください。

見出し人生の最期を考えるとき、誰もが「誰にも迷惑をかけたくない」と願うものです。

最新のアンケート調査では、「最もなりたくない病気」として、多くの方が「がん」と並んで「認知症」を挙げています。その理由は、認知症が自分自身の尊厳を脅かすだけでなく、残された家族に大きな負担をかける可能性があるからです。

特に大きな問題となっているのが、認知症による「資産凍結」です。

日本銀行の最新統計(2025年3月末時点)によると、日本の個人金融資産は2,195兆円に上ります。そして、三井住友信託銀行の推計では、2020年時点で認知症高齢者が保有する資産総額は約250兆円、2030年には200兆円から220兆円に達し、日本の個人金融資産の約1割に相当すると見込まれています。

これら巨額な資産が、本人の判断能力低下により「凍結」してしまうリスクは、もはや他人事ではありません。

この記事では、認知症による資産凍結の対策としてよく耳にする「成年後見制度」「代理人カード」「遺言書」に加え、近年注目されている「家族信託」について、そのメリット・デメリットをわかりやすく解説します。


 

認知症で資産が凍結するとは?

認知症になると、本人の意思確認が難しくなるため、銀行は不正な引き出しを防ぐ目的で、たとえ家族であっても預金の引き出しや解約などの手続きを制限します。これが「資産凍結」です。

身体的な理由で寝たきりになった場合も、本人が窓口に行けず意思表示が困難なため、実質的に同じ状況に陥る可能性があります。これにより、医療費や介護費の支払いが滞るなど、本人の生活に支障をきたす恐れがあります。

 

資産が凍結された場合の対処法

資産が凍結されたの解決策は、基本的に「成年後見制度」しかありません。

 

成年後見制度

認知症などで判断能力が不十分になった人を法的に支援する制度です。家庭裁判所が後見人を選任し、後見人が本人の財産を管理します。

  • メリット:本人の財産が法的に保護され、生活や医療の安心が確保されます。

  • デメリット後見人には専門家が選ばれることが多く、報酬が発生します。

    • 財産管理の自由度が低く、本人の財産を積極的に運用することはできません。

    • 親族が後見人になれる確率は、全国平均で約2割にとどまっています。

成年後見制度は強力な仕組みですが、「本人の判断能力が低下したに、家庭裁判所が介入する」という性質上、本人の意向が十分に反映されないことがあります。

 

認知症になる前にできる対策

そこで、認知症になるの元気なうちに、将来に備えることが重要です。

 

代理人カード

多くの銀行で、本人の同意があれば家族名義のキャッシュカードを発行できます。 北陸銀行、富山銀行、北國銀行、富山第一銀行、ゆうちょ銀行でも、ご本人が窓口で手続きを行うことを前提に発行が可能です。

  • メリット:ごく少額の生活費などを引き出す際に便利です。

  • デメリット本人の判断能力が低下した後は、不正防止のため利用停止されることがほとんどです。認知症になる前の段階での利便性を高めるためのものであり、認知症による「資産凍結」の抜本的な対策にはなりません。

 

遺言書

ご自身の死後、財産を誰にどのように引き継がせるかという「相続」のルールを定めます。 「予備的遺言」を活用すれば「私の有する財産すべてを妻〇〇に相続させる。ただし、妻〇〇が私よりも先に死亡したときは、長男△△に相続させる。」といった二世帯にわたる承継も可能です。(あくまで、相続時のお話し)

  • メリット:死後(相続時)の財産承継の意思を明確にできます。

  • デメリット生前の判断能力低下による資産凍結には一切対応できません。また、 遺言書は、財産を引き継いだ後の管理まではコントロールできないのです。

 

家族信託

近年注目されているのが、この「家族信託」です。 これは、ご自身(委託者)が元気なうちに、将来の財産管理と承継のルールを定めて、信頼できる家族(受託者)に財産を託す仕組みです。

家族信託の考え方

  • 目的: 財産を「託すこと」

  • 信託契約の目的:例えば「夫の死後、妻の生活費・介護費用に充てるため」

    • 信託財産:預貯金や不動産など

家族信託の3つの登場人物

  • 委託者:財産を託す人(夫・妻など)

  • 受託者:財産を管理・運用する人(子どもなど)

  • 受益者:信託財産の利益を受け取る人(夫・妻など)

この契約は、公正証書などの法的な書面で結び、不動産は「信託登記」を行うことで法的な拘束力が生まれます。

  • メリット

    • 生前と死後の両方をカバー:ご本人が認知症になっても、受託者が契約に基づいて財産管理を継続できます。(株式・有価証券の運用、売買。賃貸不動産の管理、契約、更新、修繕等、定期預金の手続き…。)

    • 柔軟な財産管理:成年後見制度と違い、自宅の売却や不動産の建て替えなど、積極的な資産活用も可能です。

    • 長期的な承継:「妻が亡くなった後も信託を継続し、財産を子どもに引き継がせる」といった、二世代、三世代にわたる円滑な財産承継が可能です。

  • デメリット

    • 専門的な知識が必要:契約内容が複雑なため、専門家のサポートが不可欠です。

    • 親族間の合意が前提:家族全員が納得して手続きを進める必要があります。

ここまで、認知症による資産凍結のリスクから、それを回避するための様々な対策についてお話してきました。

ご自身の財産をどうしたいか、そして何よりも、ご自身の「未来の安心」と、残される「家族の負担軽減」をどう両立させるか。この問いに向き合うことが、最も重要であると私たちは考えます。

遺言書は「死後の承継」に備える素晴らしい手段ですが、生前のリスクには対応できません。一方、家族信託は「生前からの財産管理」と「死後の円滑な承継」を両立できる、より包括的な備えです。

どちらの選択があなたにとって最適かは、ご家族の状況や財産の内容によって異なります。しかし、共通して言えるのは、「元気なうちに行動すること」の大切さです。

このブログが、ご自身と大切な家族の未来を考えるきっかけとなり、一歩踏み出す勇気を与えることができれば幸いです。もしご不明な点があれば、お気軽にご相談ください。

見出しなぜ「デジタル遺産」の整理が今、必要なのか?

活というと、遺言書や相続、お墓のことをイメージしがちですが、現代ではもう一つ、見過ごせない大切な準備があります。それが「デジタル遺産」の整理です。

もし、あなたが突然亡くなったとしたら、ご家族はあなたの「デジタル」な世界をどうやって整理すれば良いか、途方に暮れてしまうかもしれません。

  • パソコンやスマートフォンのデータ

  • 月々の支払いが続くサブスクリプションサービス

  • 大切に貯めた各種ポイント

  • ネット銀行やネット証券の口座

これらは、IDやパスワードが分からなければ、処分も解約も、引き継ぎも非常に困難になります。

パソコンやスマホのデータ類

パスワードやパスコードが分からなければ、ご家族はあなたの端末を開くことすらできません。その中にある、財産に関する重要なデータや、ご家族との大切な思い出の写真なども、見ることができないままになってしまいます。もし重要なデータがあれば、後でご家族が分かるように、USBメモリーに残し、保管することをお勧めします。

見過ごしがちな「サブスクリプション」の罠

以前、相続のお手伝いをさせていただいた際、故人様がネットフリックスなどのサブスクリプションサービスに加入されていました。とても便利なサービスですが、IDやパスワードが分からず、解約に大変な手間と時間がかかった記憶があります。クラウドサーバーなどの各種ネットサービスや、月額課金されるアプリも同様です。契約を解約しない限り、故人様が亡くなられた後も課金され続けてしまいます。

「ネット銀行・ネット証券」の落とし穴

従来の銀行口座とは異なり、ネット銀行はセキュリティが厳重で、IDやパスワードがなければアクセスできません。ネット証券をご利用されていた方の相続業務は、特に多くの時間を要しました。また、クレジットカードの明細書から、何に支払っているか一つ一つ確認し、全てのサービスを解約しなければ、クレジットカードの解約もできません。

 

今からできる「デジタル終活」の第一歩

これらの問題を避けるために、まずは以下のことから始めてみませんか。

  • デジタル資産のリストアップ: 利用しているサービス(銀行、証券、サブスク、ポイントなど)を全て書き出してみましょう。

  • パスワード管理: IDやパスワードを紙のノートや専用のツールで一覧にして管理します。パスワード自体は直接書かず、ヒントや保管場所をエンディングノートに記す方法も有効です。

  • 不要なサービスの整理: そもそも使っていないサービスは、定期的に見直して解約しましょう。

「いつかやろう」ではなく、今日からできる小さな一歩が、ご自身の安心と、残されたご家族の負担を大きく軽減します。

「一人ではそもそもどこから手をつけていいのか分からない」と悩んでいらっしゃる方は、ぜひお気軽にご相談ください。

お気軽にお問合せ・ご相談ください

お電話でのお問合せ・ご相談はこちら
0766-75-7176

お気軽にお問合せください

お電話でのお問合せ・相談予約

0766-75-7176

<受付時間>
9:00~18:00
※土曜・日曜・祝日は除く

フォームは24時間受付中です。お気軽にご連絡ください。

ライン公式アカウント
お問い合わせ

LINEでお問い合わせを受付中!以下のリンクから公式アカウントを友だち追加して、分からないことや相談したいことがありましたら、トークルームからお気軽にお問い合わせください!
メッセージをお待ちしています。
https://lin.ee/9yNGrbJ

新着情報・お知らせ

2025/09/02
「無料相談会のお知らせ」ページを公開しました。
2025/06/21
「建設業許可申請のお悩み相談ブログ」ページを公開しました
2025/06/20
「遺言書・相続のお悩み相談ブログ」ページを公開しました

やまもと行政書士事務所

住所

〒933-0005
富山県高岡市能町南3-26-2

アクセス

JR氷見線 能町駅から徒歩5分 駐車場あり

受付時間

9:00~18:00

定休日

土曜・日曜・祝日