遺産分割協議書のための財産評価

相続手続きにおいて、遺産分割協議書を作成する際、もっとも重要なのが「財産をいくらで評価するか」です。相続税申告とは異なり、遺産分割においては法律で定められた厳密な評価基準はありません

しかし、公平な分割を実現し、後のトラブルを防ぐためにも、原則として相続開始時(被相続人の死亡日)の「時価」で評価することが、最も妥当で公平とされています。

この「時価」を、客観的な根拠に基づいてどのように算出するのか、財産目録に記載すべき評価基準をまとめました。

 

1. 遺産分割協議における評価の基本原則

項目 評価の基準 重要なポイント
評価の基準日 原則として相続開始日(死亡日) 協議が長引いた場合、相続人全員の合意があれば協議成立時点の時価も可能。
評価の目的 市場における時価(客観的価値) 相続人全員の合意が最優先。合意形成のために客観的な資料(査定書、相場表など)が必須。

2. 主要財産の評価方法一覧(遺産分割協議用)

遺産分割協議書に添付する財産目録の評価基準をまとめました。

財産の種類 評価の基準日 評価方法の原則(時価の求め方)
不動産(土地・建物) 死亡日

死亡日時点の固定資産税評価額(市町村が定める)をもって評価します。固定資産税評価額は、通常、時価の約7割とされます。または複数の不動産業者の査定価格による時価。なお、相続税上は土地は路線価方式で評価します。

預貯金・現金 死亡日 死亡日現在の残高。金融機関発行の残高証明書(死亡日基準)を使用。
有価証券(上場株式) 死亡日 上場株式の評価方法死亡日終値(市場価格) 原則は相続開始日(死亡日)の終値です。なお、「遺産分割協議書における評価額」と「相続税における評価額」は、それぞれ目的が異なるため、その評価基準と金額が異なることがほとんどです。
金(地金、金貨など) 死亡日 死亡日店頭買取価格など、客観的な市場相場。
自動車(車) 死亡日 死亡日現在の売買実例価額(中古車買取業者の査定額など)。
会員権(ゴルフなど) 死亡日 死亡日現在の市場での取引価格(時価)

3. 【深掘り解説】高騰する金と変動する有価証券の評価

金相場の高騰や株式市場の急変(特定の方の総裁選出など)があった場合、その変動を公平に反映させることが重要になります。

 

 金(ゴールド)の評価

金は日々相場が変動します。遺産分割の評価では、相続税申告のような特別な評価規定はなく、あくまで死亡日時点の客観的な市場価格(グラムあたりの小売価格や買取価格)を基準とします。

 

 有価証券(上場株式)の評価

株価は時として乱高下しますが、遺産分割においては、相続税のように「最も低い価格」を選ぶという納税者に有利な規定は適用することは難しいです。公平を期すため死亡日当日の終値を客観的な時価とします。遺産分割では時価(市場価格など)で公平な分割を目指しますが、相続税では税法上のルール(死亡日を含む3ヶ月間の最低価格など)で評価するため、その金額は一致しないことが一般的です。

ただし、協議が長期化し、死亡時の株価と協議時の株価に大きな開きが出た場合は、全相続人の同意を得て、協議成立時点の時価を採用することも有効な選択肢です。

 

 遺産分割のための評価を一覧表で作成しましょう

財産目録の作成には、以下の項目を含む一覧表を作成し、評価の客観性を高めることが必須です。

財産の種類 財産名(銘柄名・所在地など) 数量・面積 評価の基準日 採用した評価額(時価) 評価額の根拠資料
不動産 〇〇市△△番地 土地 100 ㎡ 死亡日 3,000万円 不動産業者査定書
有価証券 〇〇株式会社 株式 1,000 株 死亡日 500,000円 証券会社残高証明書(死亡日終値)
金地金 500 g 死亡日 1,100万円 貴金属業者買取相場表
預貯金 〇〇銀行 普通預金 1 口 死亡日 1,250万円 銀行残高証明書

遺産分割協議をスムーズに進めるためにも、まずは客観的な「時価」の把握から始めましょう!

遺産分割協議をスムーズに進めるための鍵は、評価額の「公平性」と「客観性」にあります。

複雑な不動産の時価評価や、非上場株式の評価、そして高騰する金の相場確定など、ご自身で進めるには難しい点が多いのも事実です。

「評価額の算定根拠」を明確にし、「揉めない遺産分割協議書」を作成するため、専門的な視点からしっかりサポートいたします。評価基準の確定や、協議書の作成について、ご不明な点やご不安な点がございましたら、いつでもお気軽にご相談ください。

お電話またはお問い合わせフォームよりご連絡をお待ちしております。

遺言書を作成する目的は、大切な家族のために財産の分け方を明確にし、将来の「争族(争いのある相続)」を防ぐことにあります

しかし、財産を法的にどう分けるか(遺言事項)だけを記載した遺言書は、かえって家族の感情的な対立を招くことがあります。なぜなら、遺言者の「想い」「理由」が伝わらないからです。

そこで重要になるのが、法的な効力を持たない「付言事項(ふげんじこう)」です。

この記事では、付言事項の役割と、家族が遺言の内容に納得し、争族を回避するための具体的な4つの書き方と例文を行政書士の視点から解説します。

 

1. 付言事項とは?法的な「効力」と「役割」

「付言事項(ふげんじこう)」とは、主に遺言書の本文に記載する、法的な効力を持たないメッセージや補足的な説明などのことです。

 

法的効力がないのに、なぜ重要?

付言事項は、遺産分割の内容そのもの(法的な効力を持つ「遺言事項」)とは異なり、遺言者の想いや気持ちを伝えるために使われます。

その主な目的は、相続人や受遺者(遺産を受け取る人)が遺言の内容を感情的に理解し、受け入れることです。

特に、法定相続分と異なる遺産分割を行った場合など、一見不平等に見える分け方であっても、遺言者の真意を伝えることで、争い(争族)が起きるのを防ぐという、非常に重要な役割を果たします。

 

2. 争族を回避する!付言事項の4つの具体的な書き方と例文

付言事項に決まった形式はありませんが、以下の4つのパターンで想いを伝えることで、遺言の目的が達成されやすくなります。

 

1. 遺産分割の理由・補足説明を伝える

特定の相続人に多くの財産を相続させるなど、遺言の内容が一見不平等に見える場合の理由を説明するものです。これにより、他の相続人の納得を得やすくします。

目的 例文
長男に自宅を多く相続させる場合 「長男〇〇は、長年にわたり私と妻の面倒を献身的に見てくれました。そのため、長男にはこの自宅と土地を相続させることにしました。他の家族も、この私の想いを理解し、今後も兄弟仲良く助け合って暮らしていってくれることを願います。」
家業を継いだ子に株式を多く相続させる場合 「私が経営する会社の株式や事業用資産をすべて長男に相続させるのは、長男が会社の存続と発展に多大な貢献をしてくれたからです。他の子たちも、この私の判断を尊重し、遺留分の請求をしないようお願いします。」

 

2. 家族や関係者への感謝の気持ちを伝える

これまでの人生を振り返り、家族や世話になった方々へ感謝の気持ちを伝えます。

 
目的 例文
妻や子への感謝 「私は、素晴らしい妻と子どもたちに恵まれ、とても幸せな人生でした。私が亡くなった後も、家族で互いに助け合って、どうか幸せな人生を送ってください。ありがとう。」
介護をしてくれた人への感謝 「私の介護をしてくれた長男の嫁〇〇さんには、本当に感謝しています。心ばかりですが、私の財産の一部を彼女に遺贈するのは、その苦労に報いるためです。」

3. 相続人への願い・要望を伝える

相続人に対して、今後どのように暮らしてほしいか、遺言の内容以外でやってほしいことなどを伝えます。

目的 例文
家族の平和を願う 「私の家族においては、私亡き後も相続争いが起きることはないと確信していますが、皆が力を合わせ、仲良く協力して暮らしていくことを心から願っています。」
先祖供養やお墓に関する願い 「長男〇〇には、先祖代々のお墓を守り、お盆やお彼岸には供養を怠らないようにお願いします。その他の家族も、先祖を大事にする気持ちを忘れないでください。」
ペットの世話の依頼 「私が長年飼ってきた愛犬〇〇の世話を、動物好きの次女〇〇にお願いします。〇〇が最期まで安心して暮らせるように、よろしくお願いします。」

4. 葬儀や納骨に関する希望を伝える

遺言事項(法的に効力があるもの)ではありませんが、遺言者が希望する葬儀の形式などを伝えます。

目的 例文
葬儀に関する希望 「私の葬儀は、家族葬として身内だけで執り行ってください。参列者に負担をかけたくありません。」

 注意!葬儀の希望と「死後事務委任契約」の違い

付言事項として葬儀の希望を伝えることはできますが、これには法的な拘束力がない点に注意が必要です。遺言者が亡くなった後の事務を確実に行うためには、別の契約が必要になる場合があります。

 

付言事項の効果と限界

付言事項は、あくまで遺言者の「希望」や「メッセージ」を伝えるものであり、家族や遺言執行者に対して「〇〇のような葬儀をしてほしい」とお願いするに過ぎません。法的な拘束力がないため、家族がその希望通りに実行する義務はありません。

 

確実な執行には「死後事務委任契約」

死後事務委任契約は、生前に委任者と受任者(第三者や専門家)との間で締結する法的な契約です。

これにより、受任者には以下の事務を遂行する義務と権限が発生します。

  • 葬儀・埋葬に関する事務: 葬儀の形式、業者、費用の支払い、納骨や散骨の手配

  • 医療費の精算、賃貸借契約の解除

  • 行政への届出(死亡届の提出など)

家族に負担をかけたくない方や、ご自身の希望を確実に実行してほしい方は、付言事項だけでなく、この死後事務委任契約の検討をおすすめします。

 

4. まとめ:想いを「遺す」ことから、家族を「守る」へ

付言事項は法的な義務ではないため、自由な言葉で書くことができます。しかし、

遺言の効力に影響を与えないよう、法定の遺言事項とは明確に区別して記載すること。

特定の相続人への否定的な感情を露骨に書くことは、かえって感情的な対立を生む可能性があるため避けるべきことが重要です。

付言事項は、単なるメッセージではなく、残された家族が遺言者の想いを理解し、円満に助け合って生きていくための「道しるべ」です。

遺言書作成の際は、行政書士などの専門家にご相談いただき、財産のことだけでなく、家族への「愛のメッセージ」をしっかりと遺すことをお勧めします。当事務所でも遺言書作成サポートを行っておりますので、お気軽にご相談ください。

「遺言書はまだ早い」「うちは財産がないから関係ない」…そう思っていませんか?

しかし、人生の終盤を考える「終活」は、もはや特別なものではありません。そして、遺言書はあなたの想いを叶え、大切なご家族を守るための「安心のバトン」です。

今回は、日本財団の「遺言・遺贈に関する意識・実態把握調査」(2025年3月31日)の最新データから、皆さんが遺言書を作成する「リアルなきっかけ」と、作成しない理由に潜む「誤解」について解説します。

 

遺言書を作りたい動機トップ3!皆さんの本音は?

調査によると、遺言書を作りたいと思うきっかけは、やはりご自身の将来への不安と、家族への配慮が大きな割合を占めています。

順位 動機 割合
1位 自身の高齢化 55.1%
2位 相続トラブルを避けるため 32.2%
3位 配偶者や子の為に 27.2%
4位 自身の病気 15.2%

「自身の高齢化」をきっかけに、残される家族が困らないように「相続トラブルを避けるため」に行動に移す方が非常に多いことが分かります。これは、遺言書が単なる財産分けの書類ではなく、「家族への最後の思いやり」として認識されていることの表れでしょう。

ちなみに、財産を残したい相手は子供(52.8%)、次いで配偶者(36.5%)が上位でした。

 

 遺言書で最も重視したいことは「自分の意思」

遺言書を作成する上で、皆さんが最も重視するポイントは何でしょうか?

順位 重視点 割合
1位 できる限り自分のしたいように決めること 42.4%
2位 相続内容を平等にすること 37.2%
3位 生前の関わり度合いの応じて相続の内容を検討すること 16.2%

1位は「自分のしたいように決めること」で、「公平に分ける」という考えを上回っています。ご自身の人生で築いた財産だからこそ、最後はご自身の意思を最大限に反映させたいという強い思いがうかがえます。

そして、実際に遺言書に書いた内容は「誰に何を相続させるか(62.7%)」が最多ですが、「家族やお世話になった方へのメッセージ(23.9%)」も多く、やはり単なる法的書類以上の意味を持っていることが確認できます。

 

 遺言書を書いて「得られる安心感」

遺言書を作成された方が「書いてよかった」と感じる点は、非常に示唆に富んでいます。

  • 1位:気持ちの整理になった(44.8%)

  • 2位:相続トラブルの心配が減った(31.3%)

  • 2位:死後の不安が減った(31.3%)

法的な効果はもちろんですが、ご自身の人生を振り返り、意思を明確にすることで得られる「精神的な安心感」こそが、遺言書作成の最大のメリットと言えるかもしれません。

 

 作成しない理由に潜む「2大誤解」を行政書士が解消します

遺言書に興味はあるものの、作成していない方には共通の理由があります。

順位 遺言書を作成しない理由 割合
1位 遺言を書くほどの財産を持っていないから 27.8%
1位 遺言書を作るのは、手間がかかりそうだから 27.8%

この2つは長年のトップ争いですが、行政書士から見ると、これらは「誤解」に基づくものが多いです。

  1. 「財産がないから」という誤解

    • 不動産(持ち家など)を持っている場合、預貯金が少なくても、不動産の分割で揉めるケースは非常に多いです。

    • 相続財産の配分に関するトラブルを防ぐためには、「財産の多寡」ではなく、「財産の分け方」を明確にすることが重要です。

  2. 「手間がかかりそう」という誤解

    • 「遺言書の書き方がわからない(18.3%)」という不安の裏返しでもあります。

    • 行政書士などの専門家に相談すれば、財産調査から遺言書の文案作成まで、法的に有効な遺言書をスムーズに作成することが可能です。

トラブルを防ぐために必要なこととして、「相続対象となる財産の内容を普段から整理しておくこと(64.3%)」や「遺言書を書くこと(55.4%)」が上位に挙がっていることからも、事前の準備が重要だと皆さんも感じています。

当事務所では、この「手間がかかりそう」という不安を解消し、お客様の想いを反映した遺言書作成をサポートしています。「どこに相談したらよいかわからない」という方も、ぜひ一度ご相談ください。

あなたの「したい」を叶え、ご家族に「安心」を届けるために、遺言書作成をサポートいたします。

終活で「やりたいこと」は多岐にわたりますが、アンケート調査や専門家の意見を総合すると、多くの人が「家族の負担を減らす」ことと「自分の意志を明確にする」ことを重要視していることがわかります。

以下に、「終活で最初に取り組みたいこと」「重要度が高いこと」としてよく挙げられる項目をランキング形式でご紹介します。

 

終活でやりたいことランキング(重要度・着手意向順)

 

第1位:身辺整理(モノの整理・断捨離)

終活を始めるにあたって、最も多くの人が「最初に取り組みたい」と回答するのが、洋服や家具、日用品などの私物の整理です。

 ・理由:

  • 残された家族が遺品整理で困るのを避けたい。

  • 物の量が多いため、体力があるうちに早めに着手したい。

  • 身の回りを整理することで、気持ちの整理もつけやすい。

 

第2位:エンディングノートの作成

自分の考えや希望をまとめる「エンディングノート」の作成は、終活の「要(かなめ)」とも言えます。

  • 理由:

  • 自分の財産、医療、介護、葬儀、お墓に関する意思を明確に家族へ伝えられる。

  • 家族が手続きで困らないよう、連絡先や重要事項を一冊にまとめられる。

  • 遺言書と違い、法的効力はないものの、気軽に始められ、何度も書き直しができる。

 

第3位:財産整理と相続対策(遺言書含む)

家族間の金銭的なトラブルを防ぐため、また手続きの負担を減らすために、財産を整理することは非常に重要です。

  • 具体的な内容:

    • 預貯金、不動産、保険、株式などの財産一覧表を作成する。

    • デジタルデータ(ネット銀行、ネット証券、暗号資産など)のパスワードや契約情報を整理する。

    • 必要に応じて遺言書を作成し、遺産の分け方を明確にしておく。

 

第4位:医療・介護に関する意思決定

自分が病気になったり、介護が必要になったりした場合に、どのような処置を望むかを事前に決めておくことです。

  • 具体的な内容:

 ・ 延命治療の希望の有無(尊厳死の意思表示)。

  • 認知症になった場合の介護施設や療養の希望。

  • これらの意思をエンディングノート事前指示書などに残し、家族と共有しておく。

 

第5位:葬儀やお墓の準備

自分の「最期」に関する希望を決めておくことで、残された家族が迷うことなく準備を進められます。

  • 具体的な内容:

    • 葬儀の形式(家族葬、一般葬など)や規模、呼んでほしい人。

    • お墓の希望(先祖代々の墓、樹木葬、散骨など)を決めておく。

    • 葬儀社や費用について事前に調べておく。

 

終活をスムーズに進めるコツ

終活は、「これをしなければならない」という決まった順番はありません。ご自身が「最も気になっていること」や「体力的に無理なくできること」から始めるのがおすすめです。

  1. 「エンディングノートの作成」から始める

  2. 「身の回りの断捨離」から始める

  3. 「遺言書の作成」など、専門家への相談が必要なことから始める

ご自身に合ったペースで、少しずつ進めてみてくださいね。

お気軽にご相談ください。

お悩みのある方、どうぞお気軽にお越しください。

インターネットで多くの情報が得られる時代だからこそ、断片的な情報の誤解や、「誰かに話を聞いてほしい」という感情的なニーズが置き去りにされがちです。検索だけでは、あなたの心のモヤモヤは晴れません。

そんな時、最も敷居が低い相談相手が「街の法律家」である私たち行政書士です。

 

行政書士が選ばれる3つの理由

  1. 圧倒的な敷居の低さ: 「まだ手続きじゃないけど…」という段階から、気兼ねなくご相談いただけます。

  2. 厳格な守秘義務: ご相談内容は厳重に守られます。特に相続など、「ちょっと言いにくい」デリケートなお悩みも、安心してお話しください。

  3. 傾聴と専門性: 市民の皆様の「聞いてほしい」という願いに応えるのが行政書士の役目です。私自身、ケアマネジャーの試験にも合格しており、高齢者のお悩みに関して特に深くサポートできると自負しております。


無料相談会のご案内

まずは話を聞いてほしい、という方のために、無料相談会を実施しています。

  • 個別相談

    • 場所: 高岡市立能町公民館 研修室2

    • 時間: 9:30~12:00

  • 行政書士会による定期相談

    • 場所: 高岡市役所

    • ※開催日程の詳細は高岡市行政書士会にご確認ください。

「こんなこと聞いていいのかな」と迷う前に、ぜひ一度お気軽にお越しください。

遺品整理の物理的・精神的な重荷「何から手をつけていいか分からない」

1. 遠方の実家と、親の「手伝い拒否」に悩むあなたへ

「親孝行だから」「将来のため」と頭では分かっていても、実家の遺品整理生前整理はなかなか進まないものです。特に、遠方に住んでいる場合(私の実家は九州です)、頻繁に帰省して手伝うのは難しいでしょう。

そして、「手伝おうか?」と言っても嫌がる親の気持ち。まだ元気だというプライドや、自分のテリトリーに踏み込まれたくないという心理も働いているかもしれません。そうしたご家庭は決して少なくありません。

本記事では、将来的に後悔しないために、遠方の実家の遺品整理をスムーズに進める心構え、具体的な手順、そして相続を意識した実務情報まで、分かりやすく徹底解説します。

 

2. 遺品整理の「時期」と「心構え」:焦らず、心を優先する

 

2-1. いつから始めるべきか?

遺品整理を始める時期に「正解」はありませんが、一つの目安として「四十九日法要後」が挙げられます。

  • 四十九日まで: 葬儀や各種手続き(死亡届、年金・保険の手続き)で心身ともに疲弊している時期です。焦らず、重要書類の確認に留め、遺品の本格的な整理は法要を終えてからにしましょう。

  • 相続との関連: 相続には「相続放棄」の期限(死亡を知ってから3ヶ月以内)や、「相続税の申告」期限(死亡を知ってから10ヶ月以内)など、重要な期限があります。これに間に合うよう、実家にある貴重品や財産に関わる書類の探索は、最優先で進める必要があります。

 

2-2. 故人を偲ぶ「心構え」と「供養」の側面

遺品整理は単なる「モノの処分」ではありません。故人を偲び、思い出と向き合う「供養」の側面も持っています。

  • 無理をしない: 精神的にも肉体的にも負担の大きい作業です。手が止まってもいい、泣いてもいいと自分を許し、休憩を挟みながら進めましょう。

  • 誰かに頼る勇気: 物理的に遠方である、量が多すぎる、感情的になりすぎる場合は、無理せずプロの業者や親族に頼ることも、故人への最良の供養の一つです。

 

3. 遺品整理の「手順」と「分類」:何から手を付けるか

 

「何から手を付けていいか分からない」という悩みは、具体的な手順で解消できます。

 

ステップ1:最優先!貴重品・重要書類の探索

まずは、タンスの引き出しの奥や金庫などから、以下の「貴重品・重要書類」を最優先で探し、一箇所にまとめましょう。

貴重品・重要書類 目的
通帳・証書・実印 相続手続き、預金解約
生命保険証書 保険金請求手続き
権利書・登記簿謄本 不動産の名義変更
年金手帳・領収書 未支給年金・医療費控除
ID・パスワード デジタル遺品の整理(後述)

すべての遺品を手に取る前に、以下の分類用の箱(段ボール)を用意し、迷わず仕分けられるようにします。

  1. 残す・形見: 家族や親族で受け継ぐもの、特に大切な思い出の品

  2. 売る・譲る: リサイクルショップやフリマアプリ、親族・友人に譲れるもの。

  3. 捨てる: 明らかに不要なゴミ、劣化が激しいもの。

  4. 供養する: 仏壇、神棚、故人が愛用した人形など、お焚き上げが必要なもの。

 

ステップ3:場所別(小さなスペース)から着手

リビング全体や押入れ全体ではなく、「引き出し一つ」「棚の1段」といった小さな範囲から手を付け、達成感を得ながら進めましょう。

 

4. 知っておきたい「実務的な情報」

 

4-1. 処分方法と個人情報の注意点

  • 大型ゴミ・リサイクル法: 大型ゴミは自治体への事前申請が必要です。また、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコンは家電リサイクル法の対象のため、特別な方法で処分しなければなりません。

  • 個人情報の扱い: 郵便物や請求書などの書類は、シュレッダーにかけるなど個人情報が漏れないよう徹底的に処理しましょう。

 

4-2. デジタル遺品の取り扱い

スマートフォンやパソコンに残されたデジタル遺品は、物理的な遺品整理とは別に迅速な対応が必要です。

デジタル遺品 対処法
サブスクリプション 有料サービスは死後も課金が継続します。サービスの停止・解約手続きを急ぎましょう。
SNSアカウント 故人のアカウントを「追悼アカウント」に切り替えるか、削除申請を行います。
写真・データ ログイン情報が分かれば、写真やメールなどのデータバックアップを優先します。

 

4-3. 業者に依頼する場合:安心できる選び方と注意点

遠方で手が回らない、または量が多すぎる場合は、業者への依頼は有効な解決策です。

【業者選びのポイント】

  1. 見積もり: 必ず複数社(3社程度)から見積もりを取りましょう。「一式」ではなく、作業費、処分費、車両費などの内訳が明確かを確認します。

  2. 許認可・資格: 遺品整理士の資格保有者がいるか。また、一般廃棄物収集運搬業の許可を持っているかを確認しましょう。無許可業者は不法投棄のリスクがあります。

  3. 実績: ホームページなどで作業実績や顧客の評判を確認します。

【悪徳業者に引っかからないための注意点】

  • 極端に安すぎる料金: 処分費用を削っている可能性があり、不法投棄につながるリスクがあります。

  • 契約は必ず書面で: 作業内容、料金、追加料金の有無など、口頭ではなく書面(契約書)で確認し、残しましょう。

5. 「生前整理の重要性」

遺品整理を経験した人は皆、「もっと早く生前整理をしておけばよかった」と感じます。実家が遠方で、親御さんの協力を得るのが難しい場合でも、焦らず「小さな一歩」から働きかけてみてください。

  • 親の気持ちを尊重: 整理を嫌がる親には、「整理」ではなく「思い出話を聞かせて」とアプローチを変えてみましょう。話を聞く中で、大切なものを一緒に確認するきっかけが生まれます。

  • 最低限の確認: 「万が一に備えて、この書類だけはどこにあるか教えてほしい」と重要書類の場所だけでも把握しておくことが、将来のあなたの負担を大きく減らすことにつながります。実は私もこれはやりました。

遺品整理は、故人への感謝を込めて行う最後の共同作業です。焦らず、無理せず、故人とあなた自身の心を大切にしながら、一歩ずつ進めていきましょう。

遺品整理等でお悩みの方、お気軽にご相談ください。

近年、「おひとりさま」の方や、親族との関係が疎遠な方が増える中、自分の最期を迎えた後のことをどうするか、心配する声も多く聞かれます。

そんな不安を解消し、「残される人に負担をかけたくない」「自分の望む形で送られたい」という願いを実現するための仕組みが、「死後事務委任(しごじむいにん)契約」です。

遺言書と並行して作成する方が増えており、終活の重要な柱として大きく脚光を浴びています。

 

死後事務委任契約とは?

死後事務委任契約とは、ご自身が亡くなった後のさまざまな事務手続きについて、生前のうちに信頼できる第三者(受任者)に任せるための契約です。

通常、人が亡くなると、死亡届の提出や葬儀、病院費用の精算など、多くの手続きが発生します。これらは法律上、相続人が行うのが一般的です。しかし、以下のような理由から、あらかじめ受任者に事務を託しておくことで、大きな安心を得ることができます。

  • おひとりさま(身寄りがない、または親族と疎遠な方)

  • 家族・親族に負担をかけたくないと考えている方

  • 自分の希望通りの葬儀・埋葬を確実に実行してほしい方

 

遺言書だけでは足りない?死後事務委任の役割

亡くなった後のことを決めるものとして「遺言書」がありますが、遺言書が主に「財産」の相続に関する法的な効力を持つ(例:誰に何を相続させるか)のに対し、死後事務委任は、「事務」の手続きを委任するものです。

「直葬で送ってほしい」「このお墓に納骨してほしい」といった葬儀や供養の希望は、遺言書に書いても法的な強制力がありません。そのため、ご自身の死後の手続きや希望を確実に実行してもらうには、財産に関する「遺言書」と、事務に関する「死後事務委任契約」セットで準備することが非常に有効です。

 

委任できる主な事務の内容(一例)

死後事務委任契約で依頼できる内容は幅広く、ご自身の希望に応じて細かく定めることができます。

 
分類 委任できる事務の一例
葬儀・供養 死亡届の提出、火葬・埋葬の許可申請、葬儀社との契約・費用の支払い、納骨・永代供養の手配
生活の精算 入院費、介護施設利用料、家賃などの未払い費用の精算、公共料金や携帯電話、クレジットカードなどの解約・精算
行政手続き 年金や健康保険の資格喪失届、免許証等の返納
関係者への連絡 親族・知人への死亡通知、SNSやメールアカウントの削除(デジタル遺品の整理)
住居・遺品 賃貸物件の解約・明け渡し、遺品整理業者の手配と家財道具の処分

【深掘り解説】負担が大きい「遺品整理・住居の明け渡し」

死後事務の中でも、特に時間と労力がかかり、残された方にとって大きな負担となるのが「遺品整理」と「住居の明け渡し」です。

  1. 賃貸物件の明け渡し: 賃貸住宅や入居していた施設の場合、契約を解除し、原状回復したうえで、速やかに明け渡す必要があります。この手続きが遅れると、家賃や利用料が余計にかかり、相続人に経済的な負担がかかります。受任者は、賃貸借契約の解除手続きや、敷金の精算などを代行します。

  2. 遺品整理と家財道具の処分: 亡くなった方の住居にある家財道具や日用品は、すべて整理・処分しなくてはなりません。受任者は、契約に基づき、遺品整理業者を手配し、ご自身があらかじめ定めたルールに従って、形見分けをするもの、処分するものを選別し、家財一式の処分を完了させます。

遺品整理の費用は、住居の規模や物量によって異なりますが、数十万円かかることも少なくありません。この費用の負担も踏まえ、あらかじめ預託金(を準備しておくことが不可欠です。

 

誰に頼む?かかる費用は?

 

契約の相手(受任者)

死後事務の受任者は、身近な家族・親族友人・知人のほか、専門的な手続きが多いことから、行政書士などの士業といった専門家に依頼するのが一般的です。

契約内容は、ご自身の意思を明確に反映させるため、公正証書で作成することが推奨されています。

 

費用について

主な費用は、「契約の作成・報酬」と、「事務の実行に必要な実費の預託金」に分けられます。

  • 契約作成の報酬:専門家への報酬、公正証書作成費用など。

  • 事務の実費の預託金:実際に葬儀費用や施設費用、家財道具の処分費、受任者の交通費などにあてるための資金を、あらかじめ受任者に預けておきます。

預託金は、直葬(火葬のみのシンプルな葬儀)一つをとっても、約70万円前後が目安となるなど、ご希望の内容によって大きく変動します。残金は事務完了後に相続財産として精算されます。

「死後事務委任契約」は、ご自身の「最期まで自分らしく」を叶えるための、現代の終活に欠かせない備えの一つと言えるでしょう。

ご自身の状況や希望に合わせて、信頼できる受任者と契約内容を検討することが、未来の安心につながります。当事務所でも死後事務委任契約のご相談ができます。

どうぞお気軽にお問い合わせください。

相続人が散らばっている、前妻の子、日頃から交流がない等々

1,なぜ協議は難航するのか?

遠方に住まいがある、前妻の子、日頃から疎遠になっている場合は、協議も簡単にまとまりません。

  •  遺産分割協議は、お金の問題だけでなく、感情的な対立長年の確執が表面化しやすく、まとまらないのは特別なことではありません。

  •  協議がまとまらない原因を理解し、その膠着状態を打開するための具体的な手順を解説します。

 

2. 膠着状態に陥る主な3つの原因

  • 原因A:感情的な対立

    • 「公平だと思えない」という不満や、特定の相続人に対する感情的なわだかまりが背景にある。

  • 原因B:財産の評価が難しい

    • 不動産の評価額で意見が割れる、未上場株など評価が難しい財産がある。

  • 原因C:専門知識の不足

    • 法定相続分や特別受益、寄与分などの法律知識が曖昧なため、議論が堂々巡りになる。

 

3. 協議を前に進めるための具体的なステップ

まとまらない場合に、家庭内で無理に解決しようとせず、外部の専門家や公的機関を頼るステップを紹介します。

 

Step 1:情報整理と第三者の意見

  • 財産目録の正確化: まずは誰が見ても納得できる正確な財産目録を作成し、感情論ではなく事実ベースで議論する土台を整える。

  • 士業への相談(初期): 全員の代理人としてではなく、まず自分の状況を整理し、法的視点でのアドバイスをもらう。

 

Step 2:調停(家庭裁判所の活用)

  • 遺産分割調停の申し立て: 家庭裁判所の調停委員という第三者を交えて話し合いを進める方法を紹介する。

  • 調停のメリット: 裁判と違い、あくまで話し合いの場であり、費用や時間を抑えつつ、冷静に解決に導いてくれる。

 

Step 3:審判(裁判所の決定)

  • 審判とは: 調停でも合意に至らなかった場合、裁判官が最終的に「こう分けなさい」と決定を下す手続き。

  • 審判のデメリット: 相続人全員の意向が反映されにくく、法的な判断に基づいて決定されるため、理想の結果にならない可能性があることを伝える。長期に渡る恐れがあります。

4. トラブルを避けるために今できること

  • 遺言書の重要性: 故人が生前に遺言書を作成していれば、多くの場合、このトラブルは避けられます。

  •  現在協議で揉めている人は、感情的にならず「調停」という公的な手段あることを知っていると冷静になる場合があります。また、まだ健康な人は、「自分らしい終活」の一部として、遺言書作成を検討しましょう

当事務所では遺言書のサポートを行っています。些細な聞いてみたいことや相談に乗ってもらいたい等々お気軽にご相談ください。

マイナ保険証の完全移行と救急現場での活用「マイナ救急」

マイナンバーカードの活用範囲は、医療分野を中心に大きく広がっています。特に、従来の健康保険証の廃止と、救急現場での活用は重要なポイントです。

 

マイナ保険証の完全移行スケジュール

国が定める大きな節目は、2025年12月2日です。

これは、従来の紙やプラスチックの「健康保険証」の新規発行が廃止され、原則としてマイナンバーカード(マイナ保険証)を基本とする仕組みへ完全に移行する日です。

  • 経過措置について: 2024年12月1日までに発行された有効な健康保険証は、その有効期限まで、または最長で2025年12月1日までは引き続き使用できます。

命を守るマイナ保険証の活用:マイナ救急

マイナンバーカードは、緊急時の救命率向上にも貢献します。「マイナ救急」とは、救急隊員が傷病者のマイナ保険証(健康保険証として利用登録したマイナンバーカード)を活用し、医療情報を迅速に閲覧する仕組みです。(本格的な全国展開は2025年10月1日からの予定です。)

 

マイナ救急の主な目的と効果

この取り組みは、救急現場において、傷病者の過去の受診歴処方薬などの正確な医療情報を迅速に把握し、より適切で円滑な救急活動を行うことを目的としています。

  1. 傷病者やご家族の負担軽減: 意識がない、体調が優れない、あるいは薬の名前を覚えていないなどの場合でも、正確な医療情報が救急隊に伝わります。

  2. 迅速かつ適切な処置・搬送: 正確な病歴や服薬情報に基づき、現場での適切な応急処置と、傷病者に最適な搬送先病院の選定がスムーズに行えます。

  3. 搬送先病院での治療準備促進: 事前に医療情報が病院に共有されるため、病院側が早期に治療の準備を整えることができます。

 

仕組みのポイント

  • 情報の閲覧方法: 救急隊員は、救急車に備え付けのカードリーダーとタブレット端末を使い、マイナ保険証を読み取ります。

  • 閲覧情報の限定: 閲覧できるのは、氏名、住所などの基本情報と、救急活動に必要な受診歴、薬剤情報などの医療情報に限定されています(税や年金などの情報は閲覧できません)。

  • 同意と本人確認: 原則として傷病者本人またはご家族の同意を得て情報を閲覧します。また、本人確認は顔写真で行うため、暗証番号の入力は原則不要です。

この重要な取り組みの恩恵を受けるため、万が一に備えて健康保険証として利用登録したマイナンバーカード(マイナ保険証)を常に携行することが推奨されています

お子さんやお孫さんのために「将来渡したい」「兄弟公平に分けたい」と、ご自身の財産を子供名義の口座にコツコツ貯めている方は多いでしょう。親の善意から生まれたこの貯金が、実は相続の際に大きなトラブルの種になることをご存知でしょうか。

この問題の核心となるのが「名義預金」です。

項目 内容
名義預金の定義 口座の名義人(形式的な所有者)と、実際にお金を出したり管理・運用したりしている実質的な所有者が異なる預金のこと。
具体例 祖父母が孫名義で作った口座、専業主婦が夫の収入を自分の名義で預金しているケースなど。
最大の問題点

相続発生時、名義預金は名義人の財産ではなく、実質的な所有者(亡くなった人=被相続人)の財産とみなされます。結果、相続財産に含めるべき申告漏れとなり、相続税の課税対象に追加されます。

税務署は名義預金を「申告漏れが多い財産」として特に注視しており、税務調査では家族全員の口座も含めて調べられます

 

2. 名義預金と判断される「5つの基準」では、

税務署はどのような基準で「名義預金である」と判断するのでしょうか。以下のチェックポイントに一つでも該当すると、名義預金と疑われる可能性が高まります。

チェックポイント 解説
1. 預金の資金源は誰か? 預金されたお金が、亡くなった人(被相続人)の収入や財産から出たものかどうかが最も重要です。
2. 通帳や印鑑の管理者は誰か? 通帳・印鑑・キャッシュカードを被相続人が保管し、名義人が自由にアクセスできない状態では、名義預金と判断されます。
3. 口座の名義人は預金の存在を知っていたか? 名義人が「自分の名義で預金があること」自体を知らない場合は、贈与が成立していないとみなされます。
4. 名義人は預金を自由に使える状況にあったか? 名義人がそのお金をいつでも引き出したり、使途を決めたりできる状態(=支配権の移転)になっているかが問われます。
5. 贈与の意思表示と合意があったか? 親が一方的に貯めただけでなく、民法上の贈与契約が成立するための双方の意思表示(「あげる」「もらう」の認識)があったかが確認されます。

あなたも心穏やかな終活の一歩を踏み出しませんか?

「遺言書」と聞くと、つい「争い」や「死」といったネガティブなイメージを抱いてしまうかもしれません。

しかし、実際に遺言書を作成した多くの方が口にするのは、「書いてよかった」という安堵と満足感です。遺言は、あなたの人生の集大成として、「残される家族への最高の贈り物」となるからです。

この記事は、あなたが心穏やかに終活を終え、ご家族あなたの「思い」を確実に届けるための遺言作成の完全版ガイドです。

専門的な手続きの話だけではありません。なぜ遺言書があなたの「終活」を成功させ、家族を争いから守ることができるのか、その本当のメリットを、作成者が実感した3つの「書いてよかったこと」から深く解説します。

この記事を読めば、あなたは不安から解放され、「ありがとう」を込めた最後のメッセージを、大切な人に確実に遺すことができるでしょう。

 

1. 相続の「争い」を予防し、家族の負担を軽減できる

遺言書を作成する最大の目的は、残される家族が財産をめぐる「争続」に巻き込まれるのを防ぐことです。

  • 遺産の分け方で悩まなくて済む: 「誰にどの財産をどれだけ」と具体的に指定することで、相続人全員での話し合い(遺産分割協議)が原則不要になります。これにより、家族が感情的に対立するリスクを大幅に減らせます。

  • 手続きがスムーズに進む: 遺言書があるだけで、不動産の名義変更や預貯金の解約といった煩雑な手続きを迅速に進められます。あなたの死後の家族の時間的・精神的な負担を軽減できるのは、大きな親心です。

  • 感謝の気持ちを伝えられる「付言事項」: 法的な効力はありませんが、遺言書に添える「付言事項」として、家族への感謝のメッセージや、遺言の内容に至ったあなたの真意を伝えることができます。この「思い」こそが、故人の意思を尊重し、家族円満な相続につながる最後のメッセージとなります。

2. 自分の意思を反映させ、大切な人を守れる

ご自身が築き上げた財産を、あなたの望む通りに、最も必要としている人に引き継いでもらうための最終意思表示ができます。

  • 自由に財産の分け方を決められる: 法律で決められた割合(法定相続分)に縛られず、「介護で世話になった長男に自宅を相続させたい」といった、特定の事情や想いを優先させることが可能です。

  • 相続人以外にも財産を遺せる: 法律上の相続人ではない内縁の配偶者お世話になった方慈善団体など、「この人に遺したい」というあなたの純粋な思いを実現できます。

  • 後見人などを指定できる: もし未成年の子どもが残されることになった場合、未成年後見人を指定し、子どもの生活や財産管理を託すことができます。

3. 本人の安心感が得られる

遺言書作成は、誰のためでもなく、あなた自身の心の整理のために最も役立ちます。

  • 気持ちの整理と安心: ご自身の財産と家族構成を改めて見つめ直し、「やるべきことをやり遂げた」という安心感が得られます。この心の平穏こそが、その後の人生を心穏やかに、そして前向きに過ごすための大きな支えとなります。

もし、遺言書の形式(自筆証書遺言、公正証書遺言など)について、さらに具体的なメリットやデメリットを知りたい点があれば、お気軽にご質問ください。

空き家問題は深刻な社会問題かつ身近な問題

本日は空き家問題の無料相談会にご参加いただき、誠にありがとうございました。

空き家問題は、私の実家でも「親なきあとの空き家」として直面していて、その深刻さを改めて実感いたしました。

本日の相談会では、空き家の売却、活用、管理といった様々な選択肢や、相続登記の義務化特定空き家に指定されるリスクなど、具体的な対策について情報を共有させていただきました。

 

本日のまとめ

  • 空き家問題は深刻な社会問題かつ身近な問題であり、早めの対策が重要です。

  • 対策としては、主に「売却(手放す)」「賃貸・活用(収益化)」「管理(所有し続ける)」の3つの選択肢があり、ご家族の意向や建物の状況に応じて最適な方法を検討する必要があります。

  • 対策を先送りにせず、ご家族で実家の将来について話し合い、方向性を定めることが最初の重要な一歩となります。

次回のご案内

本日ご都合が悪くお越しいただけなかった方、また、ご相談内容をさらに深めたいとお考えの方は、ぜひ次回の機会をご利用ください。

空き家対策は複雑ですが、専門的な情報を得て早めに行動することで、将来のリスクを大幅に減らすことができます。皆様のお悩みが解決に向かうよう、心より願っております。

本日は重ねてありがとうございました。

遺産分割協議が相続人同士でまとまらないと、不動産や預貯金など、すべての相続手続きが進められなくなってしまいます。

このような場合、次のステップとして家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立てることになります。

 

調停と審判の流れ:長期化のリスク

家庭裁判所での調停では、調停委員が各相続人の主張や言い分を丁寧に聞き取り、双方の合意形成に向けて調整や助言を行います。

ここで相続人全員が合意に至れば、その内容に基づいて無事に相続手続きを行うことができます。

しかし、もし調停でも合意が得られなかった場合は、自動的に審判へと移行します。審判では、最終的に裁判官が、遺産の内容や事情を考慮した上で、具体的な遺産の分け方を決定します。

この調停から審判という手続きは、解決までに長い年月(数年単位)を要してしまうのが大きなデメリットです。

 

最善の対策:遺言書の作成

もし、ご自身の相続で「相続人同士の意見が対立しそうだ」「協議がまとまらない可能性がある」と少しでも予想されるのであれば、前もって遺言書を作成しておくことを強くお勧めします。

有効な遺言書があれば、基本的にその内容に従ってスムーズに遺産分割が行われ、相続人の負担や争いを未然に防ぐことができます。

 

遺言書作成のご相談について

「一人で遺言書を書くのは不安…」「何から手を付けていいか分からない」

そんなお悩みを抱えていませんか?

大切なご家族のためにも、遺言書は法律的に有効で、想いが正確に伝わる内容で作成することが重要です。

当事務所では、遺言書作成に関する疑問や不安を解消し、お客様の状況に合わせた最適なサポートをご提供いたします。

どうぞ、お気軽にご相談ください。

付言事項の役割とは?

付言事項(ふげんじこう)とは、遺言書に記載された法律的な効力を持つ事項(財産の分け方など)とは別に、遺言者が残された家族や関係者に伝えたい「メッセージ」や「思い」を書き添える部分のことを指します。

法律上の直接的な効力(財産を誰にどう分けるか、など)はありませんが、遺言書を作成する上で非常に重要な役割を果たします。

 

付言事項の主な役割と目的

  1. 争族の予防(和解の促進)

    • 遺産の分け方について、なぜそのように指定したのかという理由を説明することで、相続人間に生じがちな不公平感や不満を和らげることができます。

    • 例:「長男に家を相続させるのは、長年、私達夫婦の面倒を見てくれたことへの感謝の気持ちからです」

  2. 感謝の気持ちや謝罪の表明

    • 家族や親しい人への感謝、愛情、あるいは生前の行動に対する謝罪など、心からのメッセージを伝える場となります。

  3. 法的効力のない希望の伝達

    • 葬儀の方法(家族葬にしてほしい、この曲を流してほしいなど)

    • お墓の管理や埋葬に関する希望

    • ペットの今後の世話に関するお願い

    • 事業や会社に関する将来の希望や助言

    • 介護に関する感謝や希望

 

付言事項の重要性

法律的な効力を持つのは「財産を誰にどれだけ渡すか」といった部分ですが、その「心」の部分を伝えるのが付言事項です。

遺言書の内容が法律的に正しくても、財産の分け方に対する理由や気持ちが伝わらないと、残された家族は「なぜ自分だけ少ないのか」と不満を持ち、結果的に「争族」につながってしまうことがあります。

付言事項は、遺言者の最後の肉声として、遺言者の意図を理解させ、家族の気持ちを一つにするための橋渡し役として、非常に大きな意味を持つのです。

相続でご家族が争う「争族」の背景には、多くの場合、「親の気持ちがわからない」という不満や不公平感が潜んでいます。付言事項は、この不満の根っこを優しく取り除く最高の手段です。法的効力はなくとも、家族の納得感を生み出すその力は絶大です。ご自身とご家族の未来のために、ぜひ付言事項に真心を込めたメッセージを添え、円満相続を実現しましょう。

遺言書の作成に関するご相談はお気軽にご相談ください。

もしもの時、故人の銀行口座が凍結されてしまい、葬儀代や当面の生活費に困ったらどうしますか?

実は、2019年の民法改正によって、そのような不安を解消する新制度が導入されました。それが「預貯金の払い出し制度」です。この制度を利用すれば、遺産分割協議がまとまる前でも、相続人が故人(被相続人)の預貯金から一定額を払い戻すことができるようになります。

 

【なぜこの制度が必要だった?】改正民法が生まれた背景

 

民法改正前は、故人の預貯金は遺産分割の対象となり、協議が成立するまで原則として引き出すことができませんでした。そのため、葬儀費用や当面の生活費、故人の借金の返済などに充てるお金がすぐに必要になっても、相続人が立て替えるなどの大きな負担を強いられていたのです。

なお、葬儀費用や墓所代といった費用は、本来は相続財産からの支出とはならない場合がありますが、相続人全員の合意があれば、相続財産から支払うことが可能です。ただし、相続税の算定とは異なる扱いになる点には注意が必要です。

この問題を解決するため、2019年7月1日に改正民法が施行され、この制度が導入されました。

 

【いくらまで引き出せる?】払い出しの方法と内容

この制度には、主に以下の2つの方法があります。

 

1. 家庭裁判所を通さずに金融機関で手続きする方法(単独での手続きが可能)

これが一般的に利用される方法です。他の相続人の同意がなくても、単独で故人の預貯金の一部を払い戻すことができます。

  • 払い戻しができる金額の計算方法:

  • 具体的な計算例:

    • 故人の預貯金が900万円で、相続人が子3人のみの場合を考えてみましょう。

    • この場合、各相続人の法定相続分は3分の1です。

    • ある一人の相続人が払い戻しをする場合、計算式は次のようになります。

    • つまり、この相続人は最大100万円まで引き出すことが可能です。

  • 金融機関ごとの上限額:

    • 上記の計算で算出された額が、1つの金融機関につき150万円を超える場合でも、払い戻しできる上限は150万円です。

​​計算式ででた金額と金融機関ごとの上限額と比較して低い方が払い戻し可能額です。

 

2. 家庭裁判所の判断を経る方法(緊急性が高い場合)

上記の計算で引き出せる額では足りない場合など、緊急性が高いと認められる場合に利用できます。家庭裁判所に申し立てを行い、預貯金の仮分割の仮処分として払い戻しが認められるものです。この場合は、払い戻し額に上限はありませんが、家庭裁判所が個別の事情を考慮して判断します。

 

【利用する際の注意点】

  • 遺産分割での取り扱い: この制度を利用して払い戻した預貯金は、遺産分割の際に、その相続人がすでに取得したものとして扱われます。

  • 必要書類: 手続きには、故人の戸籍謄本(出生から死亡まで)、相続人全員の戸籍謄本、払い戻しを希望する相続人の印鑑証明書など、複数の書類が必要になります。

  • 事前の確認: 金融機関によって、必要書類や手続きに時間がかかる場合があるため、事前に確認することをおすすめします。

ご不明な点があれば、お気軽にご相談ください。

日本全国で深刻化している空き家問題。実家を相続したがどうすればいいかわからない、管理するのに負担を感じている、といったお悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。

空き家を放置すると、所有者だけでなく、地域全体にさまざまな悪影響を及ぼす可能性があります。この記事では、空き家が増える原因から、放置することの危険性、そして国や自治体が提供している具体的な対策まで、わかりやすく解説します。

 

1. なぜ空き家は増え続けるのか?主な4つの原因

空き家問題の根本には、以下のような複数の要因が絡み合っています。

  • 少子高齢化と人口減少:日本の総人口が減少し、高齢化が進むことで、持ち主が亡くなったり、施設に入居したりして家が空くケースが増えています。

  • 相続問題の複雑化:親の家を相続しても、子どもが遠方に住んでいたり、複数の相続人で意見がまとまらなかったりして、管理が放置されがちです。

  • 経済的・心理的な負担:家を解体するには多額の費用がかかります。また、更地にすると固定資産税が高くなるため、「そのままにしておいた方が得」と考える人も少なくありません。さらに、思い出が詰まった家を壊すことに抵抗を感じる心理的な側面も大きな要因です。

  • 新築志向の根強さ:日本では中古住宅よりも新築住宅を好む傾向が強く、市場に流通する中古物件が少ないことも、空き家増加の一因となっています。

 

2. 知っておきたい!空き家放置の3つのリスク

空き家を放置し続けると、以下のようなリスクが発生します。

  • コスト増:「特定空家」に指定されると、固定資産税の軽減措置が解除され、税金が最大で6倍に跳ね上がる可能性があります。行政から改善命令が出ても従わない場合は、さらに罰金が科されることもあります。

  • 安全性の問題:老朽化による倒壊や外壁・瓦の落下、台風などの災害で屋根が飛ぶなど、近隣住民に危険が及ぶことがあります。管理不足により、害獣や害虫が発生する温床となることも問題です。

  • 地域の治安・景観の悪化:管理されていない空き家は、不法投棄や不法侵入、放火などの犯罪に利用されるリスクが高まります。また、雑草が伸び放題になり、景観を損なうことにもつながります。

 

3. 空き家問題、どう解決する?国や自治体の支援制度

空き家問題の解決をサポートするため、国や自治体はさまざまな対策を講じています。

  • 空家等対策の推進に関する特別措置法:この法律により、管理が不十分な空き家に対して、自治体が所有者に指導や命令を行えるようになりました。最終的には、強制的に解体し、その費用を所有者に請求する行政代執行も可能です。

  • 相続登記の義務化:2024年4月から、相続で不動産を取得した場合の相続登記が義務化されました。これにより、空き家の所有者を明確にし、適切な管理を促す狙いがあります。

  • 空き家バンク・補助金制度:多くの自治体では、空き家の売買や賃貸を希望する人と利用者を結びつける「空き家バンク」を運営しています。また、空き家の解体やリフォーム費用を補助する制度も用意されています。

空き家問題は、単なる所有者個人の問題ではなく、地域全体の課題です。放置するリスクを理解し、国や自治体の支援制度を活用することで、問題解決への道が開けます。

9月28日(日)のセミナーでは、相続や空き家対策について、さらに具体的な相談が可能です。専門家が個別のお悩みに対応いたしますので、ぜひご参加ください。

お気軽にご相談ください。

介護認定申請からサービス利用までの流れ

こんにちは。以前、ケアマネジャーとして登録し活動していた経験から、今回は介護認定申請についてお話ししたいと思います。

介護認定は、介護保険サービスを利用するために必ず必要な手続きです。まずは、その全体的な流れについて見ていきましょう。

 

介護認定申請からサービス利用までの流れ

介護保険サービスを利用するためには、まずはお住まいの市区町村の窓口で「要介護認定」の申請をする必要があります。申請から認定、そしてサービス利用までの一般的な流れは以下のようになります。

 

1. 申請

  • 申請者: ご本人のほか、ご家族、地域包括支援センター、居宅介護支援事業所、または成年後見人,行政書士が代行することも可能です。

  • 申請に必要なもの:

    • 介護保険被保険者証

    • 主治医の氏名、医療機関名がわかるもの(診察券など)

    • 本人確認書類(マイナンバーカードなど)

    • 申請書(市区町村の窓口にあります)

 

2. 認定調査

市区町村の職員や、委託を受けた事業所の調査員が自宅などを訪問します。ご本人の心身の状態や生活の状況について、全国共通の調査票に基づいて聞き取り調査が行われます。

 

3. 主治医意見書

市区町村が、申請時に記入された主治医に意見書の作成を依頼します。これには、ご本人の病状や医学的な意見が記されます。

主治医意見書は、要介護認定の審査で使われる重要な書類です。認定調査の内容だけでは判断しにくい、本人の医学的な状態や心身の状況について、主治医が専門的な意見を記載します。

主な記載内容

  • 傷病名: 診断された病名や心身の状態。

  • 特別な医療: 点滴や人工透析など、特別な医療の必要性。

  • 認知症の状態: 認知機能の障害の有無や程度。

  • 行動障害: 徘徊、暴言、暴力などの有無。

  • 身体の状態: 身体機能や生活機能の低下度合い。

  • 介護の必要性: 介護を行う上での注意点など。

この意見書は、一次判定と二次判定(介護認定審査会)の両方で用いられ、総合的な要介護度の判断材料となります。

受診の際の注意点 主治医意見書は、普段から本人の状態をよく知っているかかりつけ医に作成を依頼するのが一般的です。そのため、診察時にご家族が以下の点を医師に伝えておくことが重要です。

  • 最近の様子: 普段の生活での変化(転びやすくなった、食欲が落ちたなど)。

  • 困っていること: ご本人やご家族が困っている具体的な状況(着替えが一人でできない、トイレの失敗が増えたなど)。

  • 生活上の注意点: 薬の飲み忘れ、昼夜逆転、幻覚・妄想など、医師が把握しきれない行動面での変化。

  • 今後の希望: どのような介護サービスを利用したいか(デイサービス、訪問介護など)。

これらの具体的な情報を伝えることで、医師は本人の状態をより正確に把握でき、実態に即した意見書を作成することができます。

 

4. 一次判定

認定調査の結果と主治医意見書の一部をコンピューターに入力し、どのくらいの介護が必要かを客観的に判定します。

 

5. 二次判定(介護認定審査会)

一次判定の結果と、認定調査の特記事項、主治医意見書をもとに、保健・医療・福祉の専門家からなる「介護認定審査会」が、最終的な要介護度の判定を行います。

 

6. 認定

認定審査会の判定結果に基づき、市区町村が要介護度を決定します。その後、「介護保険被保険者証」と「認定結果通知書」が郵送で届きます。

  • 認定区分:

    • 要支援1・2

    • 要介護1~5

    • 非該当

認定を受けたら、いよいよケアプランを作成し、介護サービスが利用開始となります。

地域包括支援センターの役割

申請手続きを進める上で、もし不明な点があれば、お住まいの地域の「地域包括支援センター」に相談されることをお勧めします。地域包括支援センターは、申請代行の相談にも応じてくれる、頼れる専門家です。専門家が無料で相談に応じてくれますので、安心して一歩を踏み出してみてください。

この記事が、富山・高岡で介護が必要になったご家族のお役に立てれば幸いです。

高岡市が「認知症になっても安心して暮らせる地域づくり」

先日、高岡イオンで開催された「認知症パートナー養成講座」に参加しました。私は以前、ケアマネジャーとして活動していた経験があるため、認知症に関する知識はありましたが、今回の講座は改めて認知症の方やご家族が抱える課題について深く考える貴重な機会となりました。

特に感銘を受けたのは、高岡市が「認知症になっても安心して暮らせる地域づくり」を目指して実施している、行方不明時の支援サービスです。

 

1. 認知症SOS緊急ダイヤルシステム

これは、認知症の方が自宅からいなくなり、行方不明になった際に、早期発見・保護を可能にするためのシステムです。事前に登録しておくと、万が一の際に専用の緊急ダイヤルに通報するだけで、協力団体(「たかおか認知症パートナー宣言事業所」を含む)や協力員に行方不明者の情報がメールで一斉に配信され、捜索への協力を依頼できます。

このシステムがあることで、ご家族の精神的な負担が大きく軽減されると感じました。

 

2. お出かけ安心シール交付事業(どこシル伝言板)

もう一つは、「お出かけ安心シール交付事業」、通称「どこシル伝言板」です。これは、認知症の方の衣服や持ち物に、QRコード付きのラベルシールを貼り付けておくという画期的な仕組みです。

行方不明になったご本人を誰かが発見した際、その方がスマートフォンのカメラでシールを読み取ると、ご家族に通知が届き、インターネット上の「伝言板」でチャット形式のやり取りができます。個人情報が表示されないためプライバシーに配慮しつつ、発見者とご家族が安全に連絡を取り合える点が素晴らしいと感じました。

これらの事業は、SOS緊急ダイヤルシステムと併用することで、より早期の発見・保護につながる強力なネットワークとなっています。

 

行政書士として、地域に貢献できること

また、講座では、それぞれの校区にある地域包括支援センターが、日々の生活のお困りごとに熱心に取り組まれている姿も拝見し、頭が下がる思いでした。

私は行政書士として、介護保険の手続きだけでなく、成年後見制度や遺言、財産管理など、認知症を抱える方の法的なサポートを専門としています。今後は、これらの行政サービスと連携しながら、ご家族が安心して手続きを進められるようにお手伝いすることで、高岡市の目指す「共生社会」の実現に貢献していきたいと考えています。

「親の介護は私ばかりが頑張ったんだから、遺産は多くもらう権利がある」

そう主張する姉と、「私もできる限りのことはした」と訴える妹。相続の話し合いで、こんな対立が起こることは少なくありません。特に、親孝行の形が異なる兄弟姉妹間では、お互いの貢献を巡って深刻な溝が生まれることがあります。

今回は、そんな家族のよくある事例をもとに、相続で問題になりやすい「寄与分」と、その背景にある家族間の「見えない溝」について考えてみましょう。

 

介護vs仕送り、どちらの貢献が認められる?

【姉の主張】 「私は親の隣の県に住んで、頻繁に帰省して身の回りの世話をした。介護認定にも付き添った。これは寄与分として評価されるべきだ」

【妹の主張】 「私は遠方に住んでいて頻繁な帰省は無理だった。その代わり、旅行に連れて行ったり、お菓子を送ったり、お金も使ってきた。これだって親孝行だ」

一見、どちらの主張ももっともなように聞こえます。しかし、法律の世界では、両者の貢献は全く異なる評価を受けます。

 

「寄与分」として認められるハードル

「寄与分」とは、故人の財産を維持・増加させるのに特別な貢献をした場合に、他の相続人より多く財産をもらえる制度です。

  • 姉の貢献は? 親の介護や世話は「寄与分」として認められる可能性があります。しかし、「特別な貢献」とみなされるためには、単なる日常的な扶養義務を超えていることが必要です。このケースで姉が親から交通費やお金をもらっていた場合、その貢献は「無償」ではないと判断され、寄与分として評価される可能性は低くなります。

  • 妹の貢献は? 残念ながら、親孝行として行った旅行や贈り物、仕送りなどは、法律上「扶養義務の範囲内」と見なされることがほとんどです。これは「特別の寄与」とは認められにくく、寄与分として主張するのは困難です。

 

親の生前から始まる「相続」という名の争い

最も深刻な問題は、親御様がご健在のうちから、財産をめぐって動きが出ている点です。

「相続税がかかるから」と親の預金を引き出す行為は、親の意思能力が確認できなければ、後々「特別受益」として他の相続人から追及される可能性があります。また、親の財産が誰の管理下にあるか不透明になることで、不信感が兄弟間で増幅し、遺産分割協議が始まる前から、すでに家族関係に亀裂が入ってしまうのです。

 

争いを避けるためにできること

親孝行の形は人それぞれです。しかし、それが将来の争いの火種になることは避けたいものです。

  • 感謝の気持ちを言葉で伝える: 介護や金銭援助など、お互いの貢献を認め合い、感謝の気持ちを言葉にして伝えることが、感情的な対立を防ぐ第一歩になります。

  • 親との対話を大切に: 親御様が元気なうちに、自身の財産や今後の希望について、家族間で話し合う機会を設けることが重要です。

  • 記録を残す: 介護日誌や送金記録など、貢献した内容を客観的な形で記録しておくことは、いざという時の助けになります。

相続は、単なる財産の分配ではなく、故人との関係、そして家族の歴史を清算する場でもあります。大切な家族と、円満な形でこのプロセスを乗り越えるために、今からできることを考えてみてはいかがでしょうか。

故人が遺言書を残してくれていた。しかし、その内容が自分にとってはあまりにも不公平だと感じていませんか?「遺言書だから仕方ない…」と諦める必要はありません。

実は、遺言書の内容にかかわらず、法律で保障された最低限の遺産取得分が存在します。それが「遺留分」であり、その遺留分が侵害された場合に請求できるのが『遺留分侵害額請求』です。

この記事では、遺留分侵害額請求の基本から具体的な計算例、手続きの流れ、そして専門家である行政書士がどのようにサポートできるかを解説します。

 

1. 遺留分侵害額請求とは?基本を知ろう

遺留分とは? 遺留分とは、特定の相続人(配偶者、子、直系尊属)に保障される、法律上の最低限の遺産の取り分のことです。例えば、兄弟姉妹には遺留分がありません。これは、家族の生活保障や故人との関係性を考慮した上で、特定の近しい親族には最低限の財産を保障すべきだという考えに基づいています。

遺留分侵害額請求とは? 遺言書や生前贈与によって自分の遺留分が侵害された場合に、その不足分を金銭で請求できる権利です。以前は「遺留分減殺請求」という制度でしたが、法改正により「遺留分侵害額請求」に変わり、金銭での請求が原則となりました。

  • 誰が請求できる?(請求権者): 配偶者、子(代襲相続人を含む)、直系尊属です。

  • 誰に請求できる?(請求相手): 遺留分を侵害する形で財産を受け取った人(遺言で財産をもらった受遺者や、生前贈与を受けた受贈者など)です。

 

2. 遺留分侵害額請求の具体的な計算方法(例:配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合)

配偶者と兄弟姉妹のみが相続人であるケースで、遺言書によって配偶者の遺留分が侵害された場合を例に計算してみましょう。

具体例で確認

  • 相続財産全体の価額: 6,000万円

  • 相続人: 配偶者A、兄弟姉妹B

  • 遺言書の内容: 「全財産を兄弟姉妹Bに遺贈する。」

この遺言書は、配偶者Aに一切財産を遺さない内容であるため、配偶者Aの遺留分を侵害しています。

計算:

  1. 配偶者Aの遺留分: この場合、相続財産全体の2分の1が遺留分権利者全体の総体的遺留分となります。遺留分権利者は配偶者Aのみであるため、配偶者Aの遺留分は6,000万円 × 1/2 = 3,000万円となります。

  2. 遺言書の効力と配偶者の請求: 遺言書自体がすべて無効になるわけではありません。配偶者Aは、遺留分を侵害した兄弟姉妹Bに対して、自身の遺留分である3,000万円を「遺留分侵害額請求」として請求することができます。

  3. 最終的な財産の帰属(配偶者Aが請求した場合):

    • 配偶者A: 3,000万円

    • 兄弟姉妹B: 6,000万円(遺言による取得分) - 3,000万円(配偶者Aへの支払分) = 3,000万円

したがって、遺言書で指定された人が全財産を取得できるのは、遺留分を持つ相続人が遺留分侵害額請求を行わない場合か、遺留分を侵害していない場合に限られます。遺留分侵害額請求があれば、その分は遺言書の内容よりも優先して配偶者が取得することになります。

 

3. 請求には期限がある!時効に注意

遺留分侵害額請求には、「遺留分侵害の事実と侵害する者を知った時から1年以内」、または「相続開始から10年以内」という短い時効があります。この期限を過ぎると請求できなくなるため、早期の対応が非常に重要です。

 

4. 遺留分侵害額請求の手続きの流れと行政書士の役割

遺留分侵害額請求の手続きは、専門知識を要し、感情的な対立も生じやすいため、専門家のサポートが不可欠です。

手続きの一般的な流れ:

  1. 遺留分侵害額の算定: 専門家と協力し、正確な財産調査に基づき請求額を算出します。

  2. 内容証明郵便による請求: 相手方への意思表示と時効の中断のために、内容証明郵便を送付します。

  3. 交渉: 相手方との話し合いによる解決を目指します。

  4. 調停・訴訟: 話し合いで解決しない場合、家庭裁判所の調停や地方裁判所での訴訟へ移行します。

行政書士の役割: 行政書士は、遺留分侵害額請求に関する以下のサポートが可能です。

  • 相続関係図の作成: 複雑な相続関係を整理し、相続人を明確にします。

  • 相続財産調査: 遺産や生前贈与の全容を把握するための調査を支援します。

  • 内容証明郵便の作成: 法律的な効果を持つ書面作成を代行し、正確な意思表示をサポートします。

 

遺留分侵害額請求はあなたの権利を守る最後の砦

遺言書に不満があっても、諦める必要はありません。遺留分侵害額請求は、あなたの相続における正当な権利を守るための大切な手段です。複雑な手続きや計算、そして何よりも時間との勝負となる遺留分侵害額請求は、専門家への早期相談が成功の鍵を握ります。知識をもって権利を主張することは大切なことですね。

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